研究課題
冬季から春季の日本周辺では、しばしばエアロゾル等の大気汚染物質が増加し、越境汚染の問題など社会的影響も大きい。本研究では、放出量の推定精度の低い場所の汚染物質を検出しやすい秋田県で地上観測とドローンによる大気鉛直観測を行い、観測情報を化学輸送モデルに同化することで、これまで推定精度の低かった東アジアのエアロゾル放出量を改善したモデルを開発することを目的としている。データ同化システムでは、観測されたエアロゾル濃度をもっともよく再現するように放出量を最適化し、その際の汚染源付近の放出量を「真の値」として逆推定する。近年公開されるようになったヨーロッパのCAMSエアロゾルデータは、このようなデータ同化を利用した大気微量成分の客観解析であるが、こうした全球的なデータを取得して化学輸送モデルの初期値とし、さらに日本付近のエアロゾル観測情報を加えることにした。まずは、季節的な変化を捉えバックグラウンド濃度を知るため、秋田県立大学における定期的な地上観測やドローンによる大気鉛直観測を行った。また高濃度イベントを捉えるための集中観測に向け、観測に用いているハンディカーボンモニターのエアロゾル濃度の精度を評価するためのエアサンプラーの設置を進めている。代表者は秋田まで出張し設置場所の下見を行い、また分担者と協力して設置準備を整えた。昨年度までに開発を進めた化学輸送モデルを用いて、本年度は「富岳」によるシミュレーションを行い、結果の妥当性を評価した。また、観測結果が得られてから迅速にシミュレーションや解析を行うために、代表者が所属する国立環境研究所のベクトル機でシミュレーションを行い、スカラー機を用いてデータ変換・作図を行う一連のシステムの構築を行なった。
3: やや遅れている
昨年度までに開発を進めた化学輸送モデルによるシミュレーションを行って結果の妥当性を評価し、また観測結果が得られてから迅速にシミュレーションや解析を行うためのシステム構築を行うなど、観測と連携するためのモデリングシステムの準備が進んだ。また、化学輸送モデルの初期値として用いるためのCAMSデータの収集も進めた。季節的な変化を捉えバックグラウンド濃度を知るため、秋田県立大学において定期的な大気観測を行い、ドローンによる大気鉛直観測にも取り組んだ。また来年度の集中観測に向けて地上観測を検証するためのエアサンプラー設置の準備も進めた。当初の計画では本年度に集中観測を行う予定であったが、コロナ禍での出張制限などにより観測計画に遅れが生じている。
秋田県立大学における定期的な地上連続観測やドローンによる大気鉛直観測を継続する。また、冬季の高濃度イベントを捉えるための集中観測の実施を計画しており、その際には地上観測とドローン観測の他に、エアサンプラーによるエアロゾル捕集を予定している。さらに、国立環境研究所で構築した観測と連携するためのモデリングシステムを自動化し、CAMS等のデータ取得・変換、シミュレーション、排出量推定を迅速に行えるようにする。これにより、日本付近のエアロゾル観測情報を迅速に同化し、排出量データの改善につなげることを目指す。
当初の計画では今年度に実施する予定の集中観測が次年度に延期されたため、そのための旅費や観測のための物品費を次年度に使用する必要が生じた。
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