研究課題
DNA損傷時にDNA損傷修復と転写制御がユビキチン依存性タンパク質分解を介して協調的に制御されていることを示すことが本研究の目標であり、代表者らがDNA 修復因子Ku80のユビキチンリガーゼとして発見した、RNF126によるヒストンシャペロンNAP1L1のタンパク分解を介した、DNA損傷におけるクロマチン構造変換と 転写制御メカニズムを明らかにしたい。 代表者らはこれまでにNAP1のカウンターパートであるNAP1L1がユビキチンリガーゼRNF126と結合し、ユビキチン化されてタンパク質分解を受けることを発見した。細胞株を用い、野生型やユビキチン化活性を欠損した変異体RNF126の過剰発現やsiRNAによるRNF126のノックダウン細胞を解析した結果、RNF126は細胞周期 のG2初期にNAP1L1の分解を促すことで、増殖に重要な転写因子E2F-1のクロマチンへの結合量と転写活性を負に制御しているのではないかと考えられた。E2F-1は NAP1, NAP2と結合し、コアクチベーターp300/CBPと転写複合体を形成して働くことがこれまでに報告されており、RNF126はNAP1L1のタンパク質分解を介してクロ マチン構造を変化させ、転写複合体アセンブリーを制御しているという仮設が考えられた。この仮説を検証するために、NAP1L1のタンパク質発現量を調べて細胞 周期を通じて一定であること、またS期のみ核局在を示す結果を得た。しかし、ガンマ線照射時にはNAP1L1の発現量低下が確認された。DNA損傷時には、S期でも NAP1L1が分解を受けて機能を停止すると考えられ、生化学的手法を用いて解析を進めている。 マイクロアレイを用いたmRNA発現量の解析を行い、RNF126-RNAi処理細胞、RNF126 の野生型やCS変異体の過剰発現細胞についてRNAを抽出しマイクロアレイ解析結果も解析中である。
4: 遅れている
代表者が所属する東北メディカル・メガバンク機構バイオバンク部門は、コホート研究等における検体の受入・処理・保管管理等が主な業務であることに加えて、昨年度より第3期に入り教職員の減少が生じて研究に充てる時間が減少しているため、今年度の予定遅延の一因となっている。また、当初立てた 仮説を検証する生化学実験が思うように進んでおらず、結果が得られていない状況である。
今後の研究について、1年間の期間延長申請が承認されたため、仮説を検証する生化学実験の見直しを行う。
所属機関業務および研究の比重がより大きくなったこと、また仮説検証のための生化学実験が思うように進まないため、検証実験の予定見直しを迫られて本課題研究の遂行が遅れている。研究計画に10か月程度の遅れが生じているため、1年の期間延長を行い、予算を使用する予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件)
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