皮膚表皮に存在するメラニン色素は強力な環境ゲノム毒性因子である紫外線から皮膚を防護しているが、メラニン合成異常が逆に紫外線毒性を増強する場合もあると考えられている。本研究ではまずメラニンの皮膚ゲノムに対する防護機能や毒性機構を生体皮膚で直接解析できる解析系をマウスで開発した。表皮にメラノサイトの常在するK14-SCFマウスと突然変異解析用に大腸菌lacZ遺伝子をレポーターとして有するトランスジェニックマウス(Mutaマウス)を交配し、メラノサイト表皮常在性突然変異解析用マウス(野生型)を作出し、誘発突然変異頻度を指標に正常メラニンの防護能を定量的に明らかにすることを試みた。更にメラニン合成異常の紫外線皮膚ゲノム毒性に対する影響の評価も試みた。更にメラニン合成異常のあるMc1r欠損マウス(e/e)またはOca2欠損マウス(p/p)を交配し、皮膚表皮にメラニン合成異常を有する突然変異解析用マウスを作出し、メラニン合成異常マウスで紫外線に対する異常メラニンの皮膚ゲノム毒性を評価した。実際にはマウス皮膚の背中を除毛し、3日後麻酔下で紫外線UVBを照射した。4週間後に照射部皮膚を採取し、表皮・真皮それぞれで誘発された突然変異をそれぞれの組織のゲノムDNAから回収したlacZトランスジーンでモニターした。その結果、正常メラニンにより突然変異誘発が抑制され紫外線ゲノム毒性が防護されることを実証した。一方でメラニン合成異常マウスと正常マウスの間で突然変異誘発について表皮・真皮両組織ともに、大きな差異は認められず、異常メラニンにも同様の紫外線ゲノム毒性の抑制効果が認められた。
|