研究課題
初代マウス胎児線維芽細胞(MEF)の培養を続けるとやがて老化様の形態を示し、増殖速度が遅くなる。しかし、そのまま培養を続けるとその一部から増殖速度が増加した集団が現れ、やがて不死化する。このような不死化はゲノム不安定性を示し、ARF/p53モジュールの変異を伴う。この過程はがん細胞の発生過程のモデルになると考えている。UV-Cによる発がん過程のメカニズムの解明を目的に研究を行なっている。前年度までに、UV-C(短波長のUV)照射はMEFの不死化を早めることを示した。DNA二本鎖切断がゲノム不安定化の要因であるが、UV-C照射によりMEFにDNA二本鎖切断が生じることを示した。我々は放射線照射により誘導されるDNA二本鎖切断やヘテロクロマチン生成を指標に、これらを抑える効果の高い低分子化合物をスクリーニングにより同定し、その混合物をゲノムスタビライザーとして用いている。今年度はゲノムスタビライザーがUV-C照射後の不死化を抑制することを示した。このことからUV-C照射後にヘテロクロマチンが生成され、不死化の要因となることが推察される。また、我々は自然に不死化したMEFと放射線照射後に不死化したMEFの全ゲノム解析により、両細胞ではゲノム再編や一塩基置換がほぼ同じ領域で起こることを示している。今回、自然に不死化したMEFとUV-C照射後に不死化したMEFの全ゲノム解析を実施したところ、同様にゲノム再編や一塩基置換がほぼ同じ領域で起こることがわかった。これらのことからUV-C照射後の不死化でも自然不死化や放射線照射後の不死化と同じようなメカニズムでゲノム再編が起こると考えられる。
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PLoS One
巻: 18 ページ: e0281168
10.1371/journal.pone.0281168
Scientific Reports
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10.1038/s41598-022-25479-6