研究実績の概要 |
放射線高感受性遺伝病A-TとATLDでは、その原因遺伝子ATM, MRE11が放射線誘発DNA損傷応答に重要な機能を持つことが明らかとなってきているが、これら遺伝病患者が示す進行性小脳失調症の発症機構はいまだ明らかとなっていない。本研究課題ではその発症メカニズムに迫るために、近年これら遺伝子の役割が明らかにされつつある細胞質内ストレス応答経路におけるATMとMRE11の役割・機能的相互作用を脳神経幹細胞・血管内皮細胞を用いて明らかにすることを目的の根幹とし、さらに応答時のATM, MRE11との結合因子をプロテオミクス解析で同定、機能解明し、進行性小脳失調の発症機構の解明を目指すものである。本年解析では、免疫沈降法/プロテオミクス解析でMRE11との結合因子候補として同定したFXR1はMRE11との相互作用で酸化ストレス応答に機能する一方で、MRE11の重要機能であるR-loop解消を通してのゲノム安定性の維持には機能していないことがわかった。また、R-loopの解消におけるTUG-1の役割、発がんとの関係性についても明らかにした。 一方、MRE11と常に複合体を形成し、DNA二本鎖切断損傷発生時に騒動組み換え修復を通してゲノム安定性に機能するRAD50は、その遺伝子欠損がATM依存性チェックポイントの活性化不全、免疫不全につながることを明らかにした。このようにMRE11はゲノム安定性のキータンパク質とと考えられ、今後、複合体パートナータンパク質のさらなる役割解明が重要と考えられる。また、このような機能におけるATMとの関係性を明らかにすることも、重要だと考える。
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