研究課題/領域番号 |
20K12164
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
泉 雄大 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 主任研究員 (20595772)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DNA損傷応答 / クロマチン / ヒストン / 円二色性 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、DNA損傷に誘起されるクロマチンの構造変化を放射光円二色性分光により観測することを目的としている。 令和2年度は、放射光円二色性測定に適したクロマチン試料作製法の確立を行った。新型コロナウイルス感染症感染拡大防止に係る研究活動の制限の影響もあり、テスト測定は令和3年度に持ち越しとなったが、これまでの経験から適切な作製条件を探索できたものと考えている。また、試料作製法の確立と並行して、クロマチンを構成するヒストンタンパク質を対象とした予備実験を行った。当初は、他機関で放射線を照射することでDNA損傷を導入する計画であったが、コロナ禍で他機関の訪問が難しかったことから、熱処理によって代替した。具体的には、加熱細胞および非加熱細胞からヒストンH2A-H2Bタンパク質をそれぞれ抽出し、放射光円二色性分光によりその構造を調査した。その結果、加熱細胞由来のヒストンH2A-H2Bタンパク質の構造は、非加熱細胞由来の通常の構造とは異なっており、また、通常のヒストンH2A-H2Bタンパク質を直接加熱し、熱変性させた場合とも異なっていた。これらのことから、熱ストレスに応答してヒストンタンパク質の構造を変化させる何らかの細胞機能があることが示唆された。ヒストンの構造変化は、クロマチンの構造にも影響を与えると考えられるため、熱ストレスによりクロマチン全体の構造も変化していると考えられる。令和3および4年度に、加熱あるいは放射線によってDNA損傷を与えた細胞由来のクロマチンの構造解析および構造の時間変化を追跡する予定である。 令和2年度の成果として、オンライン開催された2つの国内学会で口頭発表を行った。また、上記の成果をまとめた論文を執筆中であり、近日中に投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で若干の計画変更を余儀なくされたが、初年度の第一目標であった試料作製法を確立することができた。また、予備実験として上記のような成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、当初の計画通り、放射線あるいは加熱によりストレスを与えた細胞から抽出したクロマチンの構造解析を放射光円二色性分光により行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は学会が中止あるいはオンライン開催となったことや出張実験が行えなかったこともあり、旅費として確保していた費用を繰り越すこととなった。また、コロナ禍で研究活動が行えなかった期間があったことから、試薬等の購入に使用する予定であった費用を繰り越すこととなった。 令和3年度分の助成金は、繰越金と合わせて、試料作製のための試薬購入費用、成果発表のための旅費、論文投稿費、オープンアクセスの費用として使用する予定である。
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