研究課題/領域番号 |
20K12166
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
花田 克浩 大分大学, 医学部, 助教 (90581009)
|
研究分担者 |
西田 欣広 大分大学, 医学部, 准教授 (10336274)
寺林 健 大分大学, 医学部, 助教 (40452429)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | DNA損傷 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き相同組換えのメカニズムの解析を行なった。「試験管内での相同組換え後期反応」の再構築の件については、RAD54 タンパク質がRAD51をDNAから乖離させる条件の検討を行い、その至適条件を見つけることに成功した。さらにその反応液にMUS81-EME1構造得意的エンドヌクレアーゼを添加したら、組換え中間体構造を解消することができた。したがって、RAD54とMUS81-EME1を介した反応については試験管内での再構成に成功したと判断した。現在、この部分に関する論文を作成中である。今後は、RAD54B、FBH1といった他のRAD51制御因子の役割に関する検証や、MUS81-EME2やGEN1といった他の構造得意的エンドヌクレアーゼの制御機構に関する検証を行なっていきたい。そのため、現在、これらの酵素の精製を行っており、RAD54Bについては精製に成功している。 一方、放射線照射後のDNA切断部位の解析については、アガロースプラグ内でターミナルデオキシトランスフェラーゼ(TdT)をDNAに作用させて、DNAの末端をビオチン化する条件の検討を行なっている。パルスフィールド電気泳動専用のアガロースは高分子のDNAを保護するための工夫が施されているようで、DNA修飾酵素が作用しにくいという特性があることがわかってきた。これらの特性が、切断させたDNA断片の末端をビオチン化する障害になっているようである。かなりラベル効率が改善されてきたが、まだ十分な量とは言えないと考えており、引き続きこの反応条件の設定を行なっていく予定でさる。また、パルスフィールド電気泳動のゲルからDNAを回収する際、多くのDNAを失うことがわかった。この手法についても至適条件の設定を行なっている最中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相同組換えの後半部分のメカニズムに関する生化学解析に関しては、順調に研究が進んでいる。第1の目標としていたRAD51タンパク質がDNAから乖離する反応を、RAD54などの因子が制御することに関して大きな前進が見られた。ATP存在下でRAD54がRAD51の乖離反応を促進させることを実証できたからである。さらに、これに組換え中間体を乖離させる酵素(Holiday junction resolvase)を添加すると、組換え中間体を解消させることができた。この反応を実証することを第2の目標と位置付けていた。ここまでを2年目までに達成できたので、計画は予定より順調に進展していると判断した。現在は、これらの研究成果を論文とするべく、論文発表のために必要なデータの取得を行なっている。 一方、放射線照射後のDNA切断部位の解析については、計画よりやや遅れている。パルスフィールド電気泳動専用のアガロースは高分子のDNAを保護するための工夫が施されているようで、DNA修飾酵素が作用しにくいという特性や、熱で簡単に融解できないという特性があることがわかってきた。これらの特性が、切断させたDNA断片の末端をビオチン化する障害になっているようである。アガロースを変えてもパルスフィールド電気泳動の結果に影響が出ないことがわかったので、現在は、低融点のアガロースを用いて、上記の問題が解消できるか検証している。このマイナス部分を考慮して、(2)おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
上述の通り、相同組換えの後半部分のメカニズムに関する生化学解析に関しては、これまでに得られているRAD54に関する研究成果を論文として発表するべく、追加の検証実験を行っていく予定である。同時に、RAD54B, FBH1といったRAD51を制御している他の因子についても、その生化学的な機能を検証し、RAD54との相違点を解明する。さらに、MUS81-EME2やGEN1といった他のHoliday junction resolvaseについても、その制御機構に関する検証を行なっていく。まずは、これらの酵素がRAD51によって活性が制御されているか解明する。その後、RAD54、RAD54B、FBH1といった酵素が、その活性調節に関与しているか精製した酵素を用いて解明する。さらに、全反射顕微鏡を用いて、RAD51をDNAから乖離させる反応を可視化させたいと考えている。 放射線照射後のDNA切断部位の解析については、低融点のアガロースを用いたパルスフィールド電気泳動で分離した二重鎖切断DNAを回収し、次世代シーケンサーでその末端部位を解読し、二重鎖切断部位をマッピングする当初の計画を実現するべく、懸賞を重ねていきたい。DNAの回収に関して大きな進展が得られたので、TdTの効率を高め、効率よくDNA末端を回収できるようプロトコールを最適化していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、学会発表などの旅費を全く使用できなかった。また、高額の消耗品を必要とする次世代シーケンスに関する研究が遅れているため、高額の消耗品費を使わなかった。これらの理由で次年度に繰り越す予算が、予定より多く発生した。次年度使用額については、当初計画どおり旅費および消耗品費として使用する予定である。
|