研究課題/領域番号 |
20K12168
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
森 俊雄 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (10115280)
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研究分担者 |
森 英一朗 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (70803659)
松井 健 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 特任講師 (90528605)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 色素性乾皮症 / 神経障害 / サイクロプリン / 酸化的DNA損傷 / 修復欠損 |
研究実績の概要 |
色素性乾皮症A群(XP-A)は日本人に多い常染色体劣性遺伝病で、DNA損傷修復機構のヌクレオチド除去修復(NER)を欠損する。太陽露光部における高頻度皮膚発がんなどの皮膚障害に加え、運動失調や知能低下など進行性の神経障害を発症するが、神経障害の発症機序は不明である。太陽紫外線は脳まで届かないので、内因性のNER型DNA損傷の経年蓄積およびその転写阻害による神経細胞致死が神経障害発症の原因との仮説が提唱され、酸化的DNA損傷サイクロプリンが有力な損傷候補となっているが未だ検証されていない。そこで、8年をかけて同損傷特異的モノクローナル抗体を開発し、この度、Xpa 欠損マウスの脳にサイクロプリンが過剰に蓄積していることを世界で初めて明らかにした。 本研究では、仮説の検証をさらに進めるため、同損傷特異抗体を用いた蛍光免疫法を確立し、Xpa 欠損マウスの脳細胞にサイクロプリンが過剰蓄積することを可視化することを試みた。マウス脳組織を4%PFAで灌流固定後、OTCで包埋し、組織切片を作製した。Sodium citrate bufferによる90℃ 20分間の浸透化処理に続きDNA一本鎖化処理を行った後、損傷特異抗体および蛍光2次抗体を処理することによりサイクロプリンを可視化した。蛍光顕微鏡測定の結果、26ヶ月齢マウスの脳細胞核上にサイクロプリンが染色され、そのDNAあたりの蛍光量はXpaマウスの方が野生型に比べて有意に大きいことがわかった。この結果は先の損傷量定量結果を支持し、Xpa 欠損マウスの脳細胞にサイクロプリンが過剰蓄積することを確認するものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳オルガノイド作製担当の分担研究者が県外大学に栄転したため、この方面の研究は少し遅れている。しかし、これを補うべく損傷特異抗体を用いた蛍光免疫染色法の確立に注力した結果、脳細胞核上にサイクロプリンを可視化することに世界で初めて成功した。蛍光定量の結果、DNA当たりのサイクロプリン蛍光量はXpaマウス脳の方が野生型より高いことが明らかとなり、先の損傷量定量結果と一致した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、蛍光免疫染色によるサイクロプリン測定をXP-A患者脳標本にも広げると共に、脳オルガノイドの作製の体制確立を目指す。
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