研究課題/領域番号 |
20K12169
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
近藤 陽一 関東学院大学, 理工学部, 教授 (00391954)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | UV-B応答 / ゼニゴケ / UVR8 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
植物は常にUV-Bによる傷害を受けており、この影響は水によるUV-Bの減衰を享受することが出来ない陸上植物において特に顕著である。陸上植物はこのような傷害に対応するため、UV-Bに対する様々な防御、応答機構を有しており、これに関連して被子植物であるシロイヌナズナにおいて、UV-Bを受容し、認識するためのタンパク質であるUV-B受容体としてUVR8が見いだされている。近年UV-Bに対する応答機構については、このUVR8の機能解析が進んだことから急速に理解が進みつつある。この応答機構では、UV-Bを受容した活性化UVR8が核内に移行して、幾つかの転写因子と核内で直接相互作用することで、様々なUV-B情報伝達経路に関わる遺伝子の発現レベルの増加が引き起こされ、植物のUV-B順化応答が亢進することが分かっている。申請者はこれまでのゼニゴケを用いたUV-B応答機構の研究から、UV-B吸収色素を含む二次代謝産物を合成する鍵となる酵素をコードしているCHS遺伝子の発現を、UVR8が直接制御していることを示唆する結果を得た。本研究の目的は基部陸上植物ゼニゴケを用いて、このUVR8による下流遺伝子の直接制御のメカニズムを解明すると共に、この仕組みが陸上植物共通のメカニズムなのか明らかにすることである。 2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、当初予定していた研究を十分に行うことができない中、ゼニゴケのUVR8であるMpUVR8と、研究開始当初よりMpUVR8との相互作用の可能性があることを期待していた転写因子をクローニングし、二つのタンパク質の相互作用を検出できる酵母ツーハイブリッドシステムを利用するために、酵母に導入した。導入に成功した酵母を利用して、両タンパク質の相互作用を検討した結果、MpUVR8とこの転写因子が相互作用するという結果を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大への対応により、2020年度当初から大学において研究に割く時間が大幅に減少したことや、研究室がある校内への学生の立ち入りが禁止されたこと等が原因で、当初予定していた計画全体の実施が困難であった。その中においても、ゼニゴケのUVR8と、研究計画当初から狙っていた転写因子が直接相互作用する可能性があることを、酵母を利用した系で明らかにできた。UVR8と相互作用する転写因子を単離することは、本研究計画の土台になる部分であることから、研究計画全体の進捗状況としては「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響は大きく、2021年度も引き続き当初予定していた研究に割く時間を確保出来ない可能性がある。そこで、当初はMpUVR8と相互作用する新規の転写因子を単離することも試みる予定であったが、まずは2020年度に単離したUVR8と転写因子との相互作用について、解析を進めることを優先する。具体的には二分子蛍光補完法等の酵母を用いた系以外での相互作用解析や、UVR8欠損変異体への当該の転写因子の導入と解析、これらの遺伝子のシロイヌナズオーソログの解析等を行うための実験材料について優先的に作成し、2021年度中に解析結果を得られるように研究を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、当初予定していただけの研究時間を確保することができなかったことから、当該の研究時間分で行う予定だった実験の予算について使用しなかった。実施できなかった分の研究については、2021年度以降、優先順位を決めて行っていく予定である。
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