研究課題/領域番号 |
20K12169
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
近藤 陽一 関東学院大学, 理工学部, 教授 (00391954)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | UV-B応答 / ゼニゴケ / UVR8 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
我々の研究室では、基部陸上植物ゼニゴケのUV-B応答機構について研究を行ってきた。この研究の中で、フラボノイド合成の鍵酵素であるMpCHSのUV-B依存的な発現制御が、ゼニゴケのUVR8(MpUVR8)によって、厳密に制御されていることを見いだした。本研究の目的は、このMpUVR8による厳密な発現制御が、MpCHSの発現を制御している転写因子とMpUVR8との相互作用により行われている可能性を検証し、この仕組みが陸上植物全般で保存されているか明らかにすることである。 2021年度は、MpCHSの発現を制御していることが分かっている転写因子MpMYB14と、MpUVR8の相互作用が確認できたことから、2022年度は相互作用の生理学的な重要性を調べるために、MpUVR8欠損変異体にMpMYB14を過剰発現させ、その表現型を観察した。野生型バックグラウンドでMpMYB14を過剰発現させると、MpCHSの発現が増加し、赤色の色素が高蓄積することが知られていることから、MpCHSの発現にMpUVR8とMpMYB14の相互作用が必要なら、MpUVR8欠損変異体でMpMYB14を過剰発現させても、色素の蓄積が見られないはずである。しかしながら、MpUVR8欠損変異体バックグラウンドのMpMYB14過剰発現体と、野生型バックグラウンドのMpMYB14過剰発現体の表現型は、少なくとも白色光条件下では変わらなかった。また、MpCHSの発現レベルも、両過剰発現体で同レベルであった。これらの結果は、MpCHSの発現制御に、必ずしもMpUVR8が必要ではないことを示している。そのため今後は、UV-B照射条件下で両過剰発現体のMpCHSの発現量を解析することで、MpUVR8とMpMYB14の相互作用の生理学的役割について明らかにしていくことを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大への対応により、2020年度から大学において研究に割く時間が大幅に減少したことや、研究室がある校内への学生の立ち入りが禁止されたこと等が原因で、研究開始当初から計画全体の進捗は大幅に遅れていた。2022年度までに、これらの状況はほぼ解消されたが、最初の進捗の遅れが取り戻せているわけではない。また予算についても、計画の進捗が遅れた分の予算を使用しなかったことから、当初3年間としていた研究計画を1年間延長し、4年間とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまずMpUVR8欠損変異体バックグラウンドのMpMYB14過剰発現体を利用して、UV-B照射条件下での表現型及び、MpCHSの発現量を解析することで、両タンパク質の相互作用の生理学的役割について明らかにしたい。合わせて、MpUVR8とMpMYB14の組換えタンパク質を作成し、両タンパク質の相互作用を免疫沈降法で確認する実験を行うと共に、MpCHSプロモーターへのMpMYB14の結合が、MpUVR8によって制御されるか、ゲルシフト法による検証を試みたい。また、これらのタンパクのシロイヌナズナオーソログについて、同様の相互作用が見られるか、解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大への対応により、2020年度の研究の進捗が大幅に遅れたことで、研究全体の進捗が1年程度後ろ倒しになっている。そのため、後ろ倒しになった分の研究予算が、そのまま積み上がっている状況である。このことから、研究計画を1年間延長し4年間とした。研究計画自体は遅れているが、当初期待した研究成果が得られていないという状況ではないことから、4年目を最終年度として、計画通りの実験を順次進めていく予定である。残りの研究予算についても、当初計画の最終年度に使用する予定だった消耗品を購入予定である。
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