研究課題/領域番号 |
20K12173
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
福本 学 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 客員主管研究員 (60156809)
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研究分担者 |
大野 剛 学習院大学, 理学部, 教授 (40452007)
山本 直樹 金沢医科大学, 医学部, 講師 (00267957)
鈴木 正敏 東北大学, 災害科学国際研究所, 講師 (60515823)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 福島原発事故 / 野生ニホンザル / 甲状腺 / 水晶体 / 心血管系 / 放射線病理学 |
研究実績の概要 |
福島県の野生ニホンザルの採材を継続的に行い、総計649頭となった。福島県民健康調査で見つかっている小児の甲状腺腫瘍がI-131による初期被ばくが原因か否かが問題となっている。I-131は半減期が短く(8日)、サル甲状腺において被ばく量を現時点では計測できない。そこで、半減期が超長期(1570万年)で事故時にI-131と放出原子数比が一定であったことが知られているI-129がI-131のsurrogate markerとなるか、可能性を検討した。その結果、サル甲状腺においてI-129をICP-MSにて定量可能であることを示した。I-129濃度は採材した時期によらず、原発からの距離が離れると減少していた。これは、計測したI-129が放射性プルームの吸引よりも、経口摂取に由来していることを示している。先行的に定量したサル16個体のうち、7個体が事故初期にもI-131に被ばくしており、そのうち3個体は1 Gyを越える初期被ばく線量であった。しかし、この3頭の甲状腺に明らかな病変はみられなかった。他の9個体は事故後1年以上たってから生まれており、事故初期のI-131由来の被ばくがなかったことが明らかとなった。現時点までに甲状腺を採取できた全頭(約400頭)について組織学的検索を行ったところ、3頭に微小な増殖性病変を認めた。これらについては、放射性セシウムからの持続性被ばくの影響も無視できないことが明らかとなった。 徹照カメラを用いて、サル個体における水晶体混濁の有無検査が可能となった。また、水晶体のサル個体からの摘出と共同研究者への運搬法を確立した。心臓について大切片を作成し、1枚のガラススライド標本として検鏡可能となったため、病変が見つかった場合のオリエンテーションが容易となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
I-129濃度の計測を担当していた大学院生が就職のために退学したが、その補充ができていないために、線量評価が遅れている。また、新型コロナ感染症の蔓延により円滑な採材が停滞している。
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今後の研究の推進方策 |
甲状腺の線量を確定し、病変との関連を解析する。放射線に割合特異的とされている水晶体後嚢下の病変について重点的に検討する。心血管系の病変を検討する。死後変化を極力抑制するために、検体の安楽殺後、解剖・採材までの時間短縮が課題であるが、時間経過による変化を丹念に確認する必要がある。線量評価を現在よりも正確にするために、サルCT画像の取得し、それに基づいたボクセルファントムの作製ができないかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症のパンデミックに伴い、東京から他の地方への人的移動が実質的に不可能となり、フィールドワークが思うように実施不可能であったため。
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