研究課題/領域番号 |
20K12175
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
甘崎 佳子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, 研究員(任非) (80435700)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 放射線 / 発がん / 複合影響 / 胸腺リンパ腫 |
研究実績の概要 |
発がんは遺伝的要因とともに環境因子(食事やたばこに含まれる化学発がん物質など)に大きく影響されるため、ヒトの放射線被ばくによる発がんも、放射線単独ではなくそれら環境因子との複合影響の結果としてとらえる必要がある。マウスを用いた我々の研究から、放射線(X線)照射後に化学発がん物質(エチルニトロソウレア:ENU)を投与した群では胸腺リンパ腫が相乗的に増加するのに対して、ENU投与後にX線照射した群では相加的な増加に留まることが明らかとなっている。すなわち、複合ばく露ではばく露の順番がリスクの増減に関与することが示唆されたが、その機序は明らかになっていない。本研究はばく露の順番によってなぜ発がん率が変動するのか、その違いをもたらすメカニズムを明らかにすることを目的とした。 本研究では、既に終了したマウス発がん実験で保存したマウス胸腺リンパ腫をサンプルとし、免疫組織化学染色法によってT細胞性であることを確認した後、死亡個体由来サンプルを除くなどしてエクソーム解析に用いる検体を抽出する。それぞれの発がん要因において特徴的な遺伝子変異やターゲット遺伝子を究明し、ばく露の順番によってなぜ胸腺リンパ腫発生率が変わるのか、複合ばく露の発がん機構を明らかにする。 サンプルは、すでに終了しているマウス発がん実験から得られた胸腺リンパ腫を用いる。設定した実験群および各群の胸腺リンパ腫発生率は以下の通りである。 ①4週齢X線単独群12.5%、②8週齢ENU単独群20%、③4週齢X線と8週齢ENU複合ばく露群96%、④4週齢ENU単独群28%、⑤8週齢X線単独群15%、⑥4週齢ENUと8週齢X線複合ばく露群50%。 2020年度は、①4w・X線単独群、②8w・ENU単独群およびおよび③複合・X線→ENU群についてのエクソーム解析を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では、2020年度は ①4w・X線単独群および⑤8w・X線単独群について解析を進め、X線単独で誘発された胸腺リンパ腫の変異メカニズムの特徴と、被ばく時年齢による違いを検索する予定であった。しかし新型コロナウイルスの緊急事態宣言に伴う在宅勤務の実施により、病理標本作製等の実験を進めることが困難であった。そのため、予備実験としてエクソーム解析を先行していた一部サンプルについてデータ解析を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
現在も新型コロナウイルスについては先行き不透明であるため、状況に応じて計画を変更し研究を進める。2021年度は病理標本作製と病理診断によるT/B判定を完了し、エクソーム解析に用いる検体を決定すると共に、DNAサンプルの抽出を開始する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言に伴う在宅勤務により、予定していた実験を中止し消耗品代がかからなかった。さらに、国際学会への参加を見送ったため、旅費等による経費も大幅に変更になった。 翌年分の使用計画:消耗品および旅費
|