研究課題
放射線被ばくにより急性リンパ性白血病のリスクが上昇することが報告されているが、自然発症と放射線被ばくによるがんを区別できないため、被ばくによる正確なリスクは不明である。本研究では、放射線被ばくにより誘発されるマウスB細胞リンパ腫のゲノム解析で明らかになった特徴的な遺伝子異常を分子指標に、被ばくに起因するB細胞リンパ腫の特徴及び、放射線被ばく後の変異細胞の動態や骨髄環境の変化を経時的に解析し、被ばくによるB細胞リンパ腫発症に関わるメカニズムの全容を明らかにする。得られる結果は、放射線によるリンパ性腫瘍の発がんリスク評価の信頼性向上に活用できる。今年度は、非照射群及び、照射群に発生したB細胞リンパ腫のゲノム解析を継続し、複数のドライバー変異遺伝子候補の同定に加え、Pax5を含む4番染色体の中間部欠失、Jak3のミスセンス変異が放射線で誘発される早期発症B細胞リンパ腫に特徴的なゲノム異常であることを明らかにした。また、腫瘍におけるJak/Statシグナル伝達経路の活性化をウエスタンブロット解析により確認した。さらに、放射線を照射したマウスから経時的に採取したリンパ組織の染色体解析を行い、放射線照射後にPax5を含む4番染色体の中間部欠失とJak3のミスセンス変異が観察されることを明らかにした。本研究により、放射線被ばくにより誘発されるB細胞リンパ腫の特徴や発がんメカニズムが明らかになった。得られた成果は、被ばくに起因するがんの正確なリスク評価や治療の分子標的に関する情報として有用な知見となる。
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Carcinogenesis
巻: 43 ページ: 693-703
10.1093/carcin/bgac034