研究課題
マウス精原幹細胞 (GS細胞)のin vitro培養系を用いて、放射線照射により生じる突然変異の解析と、放射線突然変異を模倣する人工的な染色体構造突然変異の作成を試みた。初年度および第2年度は、放射線照射後のGS細胞クローンの全ゲノム解析を行い、非照射群と比較してSNVが若干の増加傾向を示すこと、small InDelやmultisite mutationは明らかに有意な増加する事を報告した。1塩基から50塩基の範囲内での欠失(deletion)についての詳細な解析からは、非被ばくコントロール群とは異なり、被ばく群ではユニークなシーケンス部分に欠失が増加していることが明らかとなった。これは、小規模の欠失型突然変異については、自然に起こるのは繰り返し配列部分に由来するのに対し、放射線ではユニークな配列部分で起こることを示唆していた。次に、さらに大きな染色体構造異常を効率良く得ることを目的として、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集技術にて人工的な染色体異常を持つ細胞の作成をモデル細胞で試みた。その結果、100bpから100kbpの範囲では、容易に人工的な欠失が作成できることが明らかとなった。1Mb以上のサイズの欠失や染色体転座も不可能ではない技術レベルに達した。また大きな欠失の原因となる修復不能な損傷の発生メカニズムについても解析し、ATMと53BP1およびCHD7が関わることを明らかとした。以上の結果より、53BP1およびCHD7の機能を抑制し、修復不能な損傷を増加させることで染色体構造異常の生成を制御できると考えるに至った。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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