研究実績の概要 |
変異検出用レポーター遺伝子であるsupF遺伝子中に生体内で多く生じるDNA損傷である7,8-dihydro-8-oxoguanine (8OHG) および脱塩基部位 (Tetrahydrofuran: THF、化学的に安定な脱塩基部位アナログ)、複製時にDNA中に誤って取り込まれるリボヌクレオチド (rA、rG) を特異的部位に導入したSV40 originとlarge T抗原を基盤としたシャトルプラスミドを構築し、野生型細胞とPolζ変異型細胞 (低正確性型:L2618M、低活性型:D2781N) にそれぞれ導入し、変異解析を行った。その結果、8OHGおよびTHFを導入したプラスミドではコントロールプラスミドと比較して変異体頻度が上昇したものの、各細胞での変異体頻度に差は見られなかった。また、rAおよびrGを導入したプラスミドでも同様に変異体頻度が上昇したものの、細胞間での差は見られなかった。これらの結果から、これらの8OHGやTHF、リボヌクレオチドのバイパスにPolζが大きく関与していない可能性が示唆された。 また、非B型DNA構造の影響を解析するため、supF遺伝子の近傍に非B型配列 (Z-form、triplex、G-quadruplex、cruciform) を導入したOriPとEBNA1を基盤としたシャトルプラスミドを上記と同様に各細胞に導入して変異解析を行った。いずれの非B型構造についてもコントロールと比較して大きな変異体頻度の変化はなく、また、細胞ごとにおいても差は見られなかった。しかしながら、SV40を基盤とした実験系と比較して細胞からのプラスミドの回収量が少なく変異体頻度の測定に用いたコロニー数が少なかったためさらなる検討の必要があると考えられた。
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