本研究では、亜ヒ酸がヒト血管内皮細胞に対してNrf-2/ARE経路の活性化を介して組織型プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)の産生を選択的に抑制し、その結果として液相のt-PA線溶活性を低下させる機序を明らかにした。また、亜ヒ酸は血管平滑筋細胞やマクロファージ様細胞に対してt-PAの阻害因子であるPAI-1や組織因子(TF)の発現を増加させることを見出した。さらに、亜ヒ酸はマウスの血管組織に対してt-PAの発現低下を引き起こすとともに血清中のt-PA量を減少させることを確認した。すなわち、動物個体レベルにおいても亜ヒ酸は線溶因子の発現抑制を介して線溶活性を阻害することが示唆された。
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