研究課題/領域番号 |
20K12186
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
岡本 誉士典 名城大学, 薬学部, 准教授 (50512323)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 乳がん / エストロゲン / 脂質メディエーター / ゲノム編集 / メタボロミクス |
研究実績の概要 |
エストロゲンは内因性ホルモンであり,生殖システムをはじめ広範囲な生体機能の調節に関与している.一方,エストロゲンの負の側面として,乳がんをはじめとする婦人系がんのリスクを上昇させることが知られている.申請者はこれまでに,エストロゲン誘発性乳がんモデルラットの血清Lipidomics解析によって,脂質シグナル分子であるLysophosphatidic acid(LPA)の前駆体Lysophosphatidylcholine(LPC)が発がんラットにおいて上昇することを見出している.したがって本課題は,LPAの生成・機能に関与するタンパク質をゲノム編集技術で破壊した遺伝子改変ラットを作製し,LPAがエストロゲン誘発性乳がんの形成に重要な役割を担っているかどうか明らかにすることを目的とする.遺伝子改変ラットを作製するための予備的な検討として,令和2年度に作成したラットLPA受容体-1遺伝子改変C6細胞株の編集パターンをシーケンス解析した.その結果,シングルセルクローニングした18ラインの細胞すべてにおいてPAM配列での切断が認められ,1~4塩基の欠失が高頻度に認められた.したがって,本gRNA複合体(crRNA+tracrRNA)は受精卵のラットLPA受容体-1のゲノム編集操作に適していることが推察された.これと並行して,ラットエストロゲン受容体α(ERα)遺伝子に対するgRNA複合体の選定も終了した.続いて,受精卵のゲノム編集を実施するべく,まずはモデルRNAとして緑色蛍光タンパク質mRNAを用いた遺伝子導入効率の検討を開始した.これまでのところ,令和4年度に本格的な受精卵のゲノム編集を開始するために,ラットの基本的な繁殖および交配技術,ならびに胚操作技術の習得のためのトレーニングを継続している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度までに目標にしていたラットLPA受容体-1遺伝子およびERα遺伝子に対するcrRNAの選定は終了し,ラットLPA受容体-1遺伝子についてはゲノム編集効率も明らかにした.その一方で,ラットの繁殖および交配に関する基礎的な技術は,本格的なin vivoゲノム編集に向けて習熟過程にあるため,「おおむね順調に進展している」が適当であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度内には,本格的な受精卵のゲノム編集を開始する.ラットの基本的な繁殖および交配技術については,とりわけ性周期の評価および受精卵の採取など,基本的な操作を安定して実施する必要がある.これまでの性周期チェックには,膣スメアテストを実施していたが,客観的な性周期の評価ができるように,膣インピーダンスチェッカーを導入するとともに,実験動物飼育管理企業からの技術指導を求め,安定したラットの繁殖および交配を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
発がん実験の開始が次年度にずれ込む見込みのため,そのための予算を繰り越すこととなった.
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