研究課題/領域番号 |
20K12186
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
岡本 誉士典 名城大学, 薬学部, 准教授 (50512323)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 乳がん / エストロゲン / 脂質メディエーター / メタボロミクス |
研究実績の概要 |
これまでにわれわれは,エストロゲンによる発がんメカニズムの一端を明らかにするべく,17β-エストラジオール(E2)の長期投与により乳腺発がんを誘導したラット血清についてメタボローム解析を実施した.その結果,脂質メディエーターであるリゾホスファチジン酸(LPA)の関与を示唆する結果を得た.そこで本研究では,E2誘発性乳がんの形成あるいは増殖にLPA受容体阻害剤が及ぼす影響について評価した.本研究は名城大学動物実験委員会の承認を得て実施された.E2(2.5 mg)あるいはKi16425(LPA受容体阻害剤,5 mg)を混合したコレステロール(Cho)錠を背部皮下に挿入することによって長期投与を実施した.雌性August Copenhagen-Irish/Segaloff(ACI)ラットを4群(①Cho群,②E2群,③E2+Ki群,④Ki群)に分けて,乳がんの触診を週1回行った.なお,データ取得は現在も進行中のため,投与22週目までの結果をまとめた.Cho群およびKi群では,投与後22週までに触知可能な乳がん形成ならびに顕著な体重変化は認められなかった.一方,E2群およびE2+Ki群では,乳腺がん形成ならび有意な体重増加の抑制が認められた.最初に発がんが認められたのは,E2群で17週目,E2+Ki群で18週目であり,22週目の時点でE2群では5匹中5匹,E2+Ki群では5匹中3匹で乳がんを触知した.22週目における各投与群の累積腫瘍数ならびに積算腫瘍サイズは,E2群で10個ならびに1341.4 mm3,E2+Ki群で5個ならびに262.8 mm3であった.以上の結果から,LPA受容体阻害剤は,エストロゲン誘発性乳がんの形成ならびに増殖に対して抑制的に作用することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である「脂質メディエーターによる乳腺発がん」に関して、乳がんモデルラットを使った発がん実験において、その関与を示唆する結果が得られているため、「おおむね順調に進展している。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
現在は予備的な実験として進めているが、厳密な投与量の設定ができていない。すなわち、実際に動物実験に用いた阻害剤が、動物個体において抑制効果を示しているのかを証明する必要がある。それと同時に、ラット血清あるいは血漿を用いたメタボローム解析によって、阻害剤が代謝物のプロファイルに影響を及ぼしているかどうか検証が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会等がオンライン開催となったため,当初額よりも旅費の支出が減り残額が生じた。また,2023年度も発がん実験を実施するが,値上がりが続く動物飼料の予算を確保することを念頭に予算を繰り越すこととなった.
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