研究課題/領域番号 |
20K12187
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
杉山 晶彦 岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (00432609)
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研究分担者 |
野原 正勝 岡山理科大学, 獣医学部, 助教 (70649996)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メトトレキサート / ラット新生児 / 小脳 / アポトーシス / p53 / 酸化損傷 / JNK pathway / プルキンエ細胞樹状突起 |
研究実績の概要 |
葉酸代謝拮抗剤メトトレキサート (MTX)の曝露を受けたラット新生児の小脳外顆粒細胞のアポトーシスの発現および細胞増殖抑制(細胞周期停止)におけるp53発現の関与を明らかにする目的により、MTX曝露後の小脳外顆粒細胞におけるp53 m-RNAの発現状況をリアルタイムPCR法を用いて解析したところ、MTX曝露後のラット新生児の小脳においてp53 m-RNAの発現上昇傾向が認められることが明らかとなった。当該結果より、MTXによる小脳外顆粒細胞のアポトーシスの発現および細胞増殖抑制(細胞周期停止)において、p53の発現上昇が関与している可能性が示唆された。また、MTXによって誘発された小脳外顆粒細胞におけるアポトーシス誘導機序における酸化損傷およびそれによって惹起されたc-JUN N-terminal kinase (JNK)経路の活性化の関与を明らかにする目的により、ヘキサノイルリジン、ジチロシン、8-OhdGを一次抗体とした免疫組織化学染色、蛋白質過酸化物の比色定量およびJNK pathway関連遺伝子を標的としたリアルタイムPCR法による遺伝子解析を実施したが、いずれの解析においても有意な変化は認められなかった。MTX投与後の新生児ラットの小脳組織に対しゴルジ-コックス染色法および抗Calbindin抗体を用いた免疫組織化学的染色を施したところ、MTXの曝露を受けた新生児ラットのプルキンエ細胞樹状突起に発達不全傾向が認められた。当該結果より、MTX曝露が新生児ラットの小脳プルキンエ細胞樹状突起の発達へ影響を及ぼす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は当初の計画通り、MTX曝露新生児ラットの小脳外顆粒細胞におけるアポトーシス促進性因子、Cyclin dependent kinase阻害因子、DNA傷害マーカーγH2AXの発現状況の解析を実施し、MTX曝露によって誘発された小脳外顆粒細胞傷害の発症機序におけるミトコンドリア経路およびFas経路、細胞周期チェックポイントを介した細胞周期停止、DNA二重鎖切断の関与に関する所見を得ることができた。また、令和3年度においても当初の計画通り、MTX曝露新生児ラットの小脳外顆粒細胞におけるp53発現および酸化損傷因子の発現の解析、小脳プルキンエ細胞の樹状突起の形状の解析を実施し、MTX曝露新生児ラットの小脳外顆粒細胞のアポトーシス発現および細胞増殖抑制におけるp53発現および酸化損傷の関与、MTX曝露が新生児ラットの小脳プルキンエ細胞樹状突起の発達へ及ぼす影響に関する所見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新生児期にMTX曝露を受けたラットの発育期小脳における①外顆粒細胞移動関連遺伝子群、②プルキンエ細胞樹状突起形成関連遺伝子群、③シナプス形成・伝達関連遺伝子群、④ミエリン形成関連遺伝子群の発現状況をDNAマイクロアレイ法を用いて網羅的に解析することにより、MTXの新生児期曝露が発育期小脳へ及ぼす影響を評価する予定である。加えて、MTXの新生児期曝露が成長期・成熟期のラットの小脳組織および行動に及ぼす影響を①病理組織学的解析、②ゴルジ-コックス染色法および抗Calbindin抗体を用いた免疫組織化学法によるプルキンエ細胞樹状突起の発達に関する病理組織形態学的手法、③行動学的手法、④Cbln1 (小脳顆粒細胞のシナプス前終末より放出され、プルキンエ細胞間とのシナプス形成を誘導する因子)のリアルタイムPCR法を用いて解析する。また、MTX曝露を受けた新生児ラットにおいて惹起された小脳病変が、葉酸製剤の投与により緩和されるか否かを明らかにする目的により、いくつかの投与条件 (投与用量、投与期間、投与時期)にて葉酸製剤をMTX曝露ラットに投与し、病理組織形態学的解析を用いて葉酸製剤の有用性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験で用いた試薬(キシレン)の価格が低下したため、余剰金が生じた。今後、当該余剰金と請求助成金を併せた研究費により適切に実験を進めることとする。
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