研究課題/領域番号 |
20K12192
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
中田 章史 北海道科学大学, 薬学部, 准教授 (70415420)
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研究分担者 |
三浦 富智 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (20261456)
山城 秀昭 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60612710)
篠田 壽 東北大学, 歯学研究科, 名誉教授 (80014025)
後藤 淳 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (90370395)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放射線 / 生殖細胞 / 実験動物 / 野生動物 |
研究実績の概要 |
実験動物における生殖組織の評価系を確立し、放射線照射後におけるマウスの生殖細胞形成機構を明らかにするために、放射線照射後に変動した遺伝子に関しての研究を行なった。50日齢のマウスにX線4 Gy照射後、一定期間飼育し精巣を摘出し精巣の維持、精子形成に関わる遺伝子に着目して発現および発現制御領域の解析をした。 精子形成に関わる遺伝子は照射群で有意に発現量が減少しているが、照射後50日目で発現量が増加傾向にあることが明らかになった。遺伝子発現の増加に対する精子形成能および受精能に関する評価を行う必要がある。 昨年度の実績において、精巣の維持に関わる遺伝子も、放射線照射後に発現量が増加しており、精巣の維持、回復に関わっている可能性が示された。今年度は、遺伝子発現制御因子の一つであるDNAメチル化が発現量に関与しているかどうかを明らかにするためにプロモーター領域におけるDNAメチル化様式について検討した。 精巣の維持、精子形成に関わる遺伝子のプロモーター領域の配列情報をデーターベースから入手し、バイサルファイトシークエンスまたはメチル化特異的PCR(MSP)法を試みた。いずれの方法でもターゲット領域の変化を捉えることができなかったため、さらなる条件検討が必要であると判断した。 また、放射線汚染地域のフィールドモデルであるアカネズミの被ばく線量推定を容易にするためのセントロメア領域を識別する分子解析マーカーの開発に着手した。ゲノム情報の乏しい非モデル生物であるアカネズミからセントロメア領域の配列の探索を行い、候補となるDNA断片のクローニングを行なった。得られたクローンに関して、染色体での分布解析を次年度に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験動物における放射線の生殖組織の評価系を確立するためには、線量と生殖細胞の様々な変化を把握する必要があるが、照射時期、照射条件等に関する知見が蓄積されていないために、実験動物の体細胞で行われている研究手法および結果が生殖細胞に対応するかどうか検討が必要である。 遺伝子発現制御因子の一つであるDNAメチル化が発現量に関与しているかどうかを明らかにするためにはプロモーター領域におけるDNAメチル化様式の解析が必要であるが、メチル化領域の取得にまだ至っていない。 放射線汚染地域における生殖組織の評価系を確立するために、フィールドモデルであるアカネズミの評価対象の遺伝子配列の部分領域を得たが、発現解析までには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの放射線照射実験後、飼育中に多くの個体が死亡したため、照射や飼育条件について検討を行う。放射線照射後の精巣の回復期、維持に関与する遺伝子の探索を行う。また、生殖器官について病理解析、減数分裂の正常性およびアポトーシスを解析を行う。 放射線によって変動する遺伝子の発現制御機構を評価するためにプロモーター領域におけるDNAメチル化様式を明らかにする。 放射線汚染地域に生息する小哺乳類の捕獲、標本作製および精子の保存を行う。野生動物における放射線の影響評価の指標作成のために、引き続きアカネズミの対象遺伝子の配列決定および発現量の測定を行う。 アカネズミの過排卵誘起、体外成熟、体外受精、受精卵移植技術の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの放射線照射実験後、飼育中に多くの個体が死亡したため、次年度使用額が生じた。照射実験が軌道に乗れば、予定通りの予算が執行できる。
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