研究課題/領域番号 |
20K12197
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研究機関 | 青森大学 |
研究代表者 |
大島 和裕 青森大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (40400006)
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研究分担者 |
立花 義裕 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10276785)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オホーツク海 / 淡水収支 / 海氷変動 / 正味降水量 / 河川水 / 海水交換 |
研究実績の概要 |
本課題では,オホーツク海の海氷形成に関わる淡水収支を総合的に評価することを目的とする。これまではアムール川からの淡水供給が海氷生成に影響すると言われてきたが,その実態を検証する。大気,陸域,海洋からの淡水供給量を定量的に見積り,海氷変動との関係を科学的に評価する。 今年度は淡水収支の解析を進めた。大気からオホーツク海への淡水供給量となるオホーツク海上の正味降水量(降水量と蒸発量の差)は,周囲陸域河川からの淡水供給量に匹敵する大きさであることが分かってきた。よって,オホーツク海の淡水収支の評価としては,アムール川に代表される陸域河川からの淡水供給だけでは不十分である。 さらに,河川流量は,これまで主要だと考えられてきたアムール川だけでなく,他の中小河川がかなりの割合を占めることが分かってきた。アムール川を除く中小河川は流域面積が小さく,これまで淡水供給源として注目していなかったが,アムール川の河川流量と比べても無視できない。 また,これらのオホーツク海への淡水供給量と海氷変動の関係に関して解析を開始した。両者を比較した結果,初冬のオホーツク海上の正味降水量と海氷変動に負相関の関係がみられた。オホーツク海への淡水供給によって低塩分層が作られることで海氷生成を促進するため,この観点からは関係が逆のように考えられ,さらなる検討が必要である。これは大気循環場を介した疑似相関の可能性もあり,オホーツク海周辺の大気循環変動に関しては幾つかの成果が得られていることを踏まえて,今後議論を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
オホーツク海の淡水収支に関して,大気からの供給(正味降水量)と陸域からの供給(河川水)に関する定量的な解析を行い,ある程度の結果が得られたが,海洋の解析が出来ていない。また,海氷変動に関しても解析は開始したものの,まだ不十分な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
淡水収支に関しては,引き続き定量的な見積りを行う。これまでの結果からオホーツク海の周辺の中小河川における降水量が多いことから,その要因として考えられる低気圧活動との関係を調べる。海氷変動と正味降水量との負相関に関しては,大気循環場の変動を介した疑似相関や,海氷形成初期における低塩分層の深化の影響などが考えられ,今後解析を行う。後者に関しては,限られてはいるものの海洋データを用いることで,淡水流入に対する低塩分層の変化について調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では打ち合わせや成果発表のための旅費を計上したが,コロナ禍により,それらを実施できていない。今年度は今のところ比較的移動が可能な状況であり,打ち合わせ及び成果発表を積極的に行いたい。
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