多様な水草類全体を考慮した信頼性の高いリスク評価を目的に、水草の体系に着目した種の感受性分布(SSD: Species Sensitivity Distribution)の解析を実施した。水草の体系に着目した種の感受性分布(SSD)の検証に向け、昨年度までに収集した合計6種の水草について、それぞれで開発した試験法を用いて、作用機序の異なる(植物ホルモン型、アセト乳酸合成酵素阻害、光合成阻害、カロテノイド阻害、細胞分裂阻害、セルロース合成阻害、脂肪酸合成阻害)7農薬(シマジン、ジクロベニル、ジチオピル、イマザピル、ジフルフェニカン、イソキサベン)の生長阻害試験を実施し、EC50値を算出した。 系統で分類したデータセットに基づくSSD解析と体系で分類したデータセットに基づくSSD解析の結果から、それぞれの農薬のHC5を算出することで、系統分類に基づいた感受性分布及び体系分類に基づいた感受性分布との比較検証を行った。 系統分類に基づくSSDのHC5と体系分類に基づくSSDのHC5は、ジクロベニルやシマジンで大きく乖離する一方で、ジチオピルやイマザピルで近似した。抽水植物のように根からの吸収を主とする水草とホザキノフサモのように葉状部全体から吸収する体系をとる水草とでは、特にジクロベニルやジマジンのような吸収移行型の農薬で毒性値が乖離することが明らかになった。これらの結果から、農薬の種類によっては系統分類に基づくSSD解析のみでは水草全体の感受性分布を把握することは困難であり、体系分類に基づいたSSD解析が必要であると考えられた。
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