研究実績の概要 |
霞ヶ浦・琵琶湖・小川原湖・十和田湖を含む日本各地の淡水湖沼からシアノバクテリアを中心に微細藻株を網羅的に分離培養し、それぞれについて、16S rRNAを用いた分子同定と顕微鏡による形態観察を組み合わせて同定を行った。また、これまでの分類学的な研究で分離培養してきたシアノバクテリア株(Dolichospermum属等)について、カビ臭(2-MIB 2-メチルイソボルネオール, ジオスミン)および毒性の関連遺伝子の網羅的探索を行うための抽出作業を開始した。 また、2-MIBとGeosminを共に産生する特徴的な種として私たちが2019年に新種発表したシアノバクテリアのMicrocoleus pseudautumnalis Niiyama et Tuji 2019について、NanoporeとMiseqを用いた全ゲノム解析を行い5.5Mbpの完全長環状ゲノムを取得した。2-MIBを産生するPseudanabaenaについても、昨年に追加してさらに2株について完全長環状ゲノムを取得した。2-MIBの産生に関わる4遺伝子(cnb-a, mtf, mic, cnbB)からなるクラスターの構造は既存のものと同一であった。 霞ヶ浦や琵琶湖などの湖沼で近年出現しているプランクトン珪藻のFragilaria longifusiformis ssp. eurofusiformisとFragilaria saxoplanctonicaについて分類学的検討を進め、正式に新産報告した。また、培養株を確立し、遺伝子解析を行った。両種については、カビ臭および毒性の問題はないと考えられたが、上水処理における凝集阻害については、今後の研究が必要である。 近年のシアノバクテリアに関わる分類学的な変更点について整理し、日本の淡水域にプランクトンとして生息するシアノバクテリアのチェックリスト(HP:浮遊性藍藻データベース)を更新した。
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