研究実績の概要 |
国立科学博物館植物研究部で開発してきたTAC株と関連株について、ジオスミン産生遺伝子geoAをSuurnakki et al. (2015)によるプライマーセット(geo78F GCATTCCAAAGCCTGGGCTTA & geo971R CCCTYGTTCATGTARCGGC)を用いて網羅的な検索を行った。その結果、Dolichospermum planctonicum, D. smithii, Anabaena macrospora, D. circinale等として同定されてきた株からgeoA遺伝子が検出されたが、rbcLおよび16S rRNA遺伝子を用いて同定について再検討したところ、Choi et al. (2018)および Li et al. (2020)によって韓国の河川から最近新種記載されたDolichospermum hangangense H.J.Choi & M.-S.Han にほとんどのものが一致した。また、既存のgeoA遺伝子を用いた論文で用いられた株についても再校した結果、Youn et. al. (2018)がジオスミン産生遺伝子の解析に用いたNIES-1647は私たちが城山湖から分離したTAC497由来であるが、これも私たちの解析の結果、D. hangangenseと再同定できた。またYoun et. al. (2018)がA. circinalisとした株は登録されている16S rRNAおよびrbcL遺伝子による解析の結果、D. hangangenseクレードに入りTuji et al.(2023)がD. sp. cf circinaleとした分類群と考えられる。この様に、ジオスミン産生種は数多く報告されているが、その多くがD. hangangenseクレードに入るものであることが分かった。 2-MIBおよび毒遺伝子については、偽増殖が見られたため、その原因を調べており、継続中である。
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