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2022 年度 実施状況報告書

化学物質のヒト健康影響評価の迅速化に資する数理統計手法の研究とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 20K12203
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

竹下 潤一  国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (60574390)

研究分担者 鈴木 知道  東京理科大学, 理工学部経営工学科, 教授 (50251369)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード毒性予測 / インシリコ手法 / 動物実験代替法 / k-近傍法 / 統計的測定精度評価 / 用量反応関係 / 順序尺度
研究実績の概要

2022年度は,2021年度に引き続き統計的アプローチによる毒性予測に関する研究及び,毒性評価・予測に資するスクリーニング試験方法の統計的測定精度評価に関する研究を行った.また,本研究課題のベースである確率・統計理論についても研究を行った.
(1)毒性予測手法の研究では,情報学分野のk-近傍法と利用する距離に関する研究成果をサーベイし,本研究課題における化学物質間距離の計算に利用する距離の候補を抽出した.サーベイの結果,0付近の小さい値では小さな数値の変化が化学物質間の類似性に大きく影響し,一方で大きな値では数値の変化が化学物質間の類似性にほとんど影響しない性質を持つ距離が適しているとの結論に至った.また,化学物質間距離の計算に用いる変数の選択方法が,毒性の類似性に与える影響を定量化した.複数のデータセットと複数の変数選択方法を用いて類似物質の毒性の一致度を比較したところ,適切な変数選択方法は用いるデータセットにかなり依存することがわかった.
(2)統計的測定精度評価手法の研究としては,昨年度に引き続き用量反応関係を測定する測定方法を対象に研究を行い,試験室間分散を用量反応関係の位置の違いに寄与する部分と,傾きの違いに寄与する部分とに分解する方法論を提案した.また,順序尺度に対する既存ばらつき指標の中から,精度評価実験の解析での利用に適しているものをシミュレーションスタディを通じて提案した.具体的には,(i)BashkanskyらによるORDANOVAで利用されている指標,(ii)Kvalsethが提案したミンコフスキー距離を用いた指標を取り上げ,このうち,ミンコフスキー距離の次数2のKvaseth提案指標が最も適しているとの結論に至った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

毒性予測手法の研究に関しては,書籍の一部にこれまでの研究成果を包括的に紹介する記事を執筆する機会が得られ,広く研究成果を紹介することができた.統計的測定精度評価手法の研究に関しては,新たな研究成果をまとめ国際誌へ投稿することができた.さらに,本研究課題のベースとなる確率・統計理論に関する成果を国際誌で2報発表することができた.
また,研究代表者の組織と研究分担者の組織の立地が近く,新型コロナの影響もなく月に1-2回程度の対面による研究ディスカッションも継続でき,本研究課題は「おおむね順調に進展している.」と判断した.

今後の研究の推進方策

毒性予測手法に関する研究については,リードアクロス手法の研究を進める.本科研費事業で整備した化学物質の毒性試験データセットの解析をさらに進め,既存毒性情報の特徴を把握し可能な限り定量化するとともに,リードアクロスを行うための化合物間距離の計算方法について検討を行う.
統計的測定精度評価手法に関する研究については,2022年度に引き続き,計測結果が順序尺度である測定方法に対する精度評価手法と,用量反応関係を測定する測定方法に対する精度評価手法それぞれについて検討を進める.
2023年度も研究代表者と研究分担者との研究ディスカッションは,月1-2回程度対面で実施することを継続する.

次年度使用額が生じた理由

(理由)少額の残が生じたため,翌年度に繰り越しをし次年度の研究費と合算して有効活用することとした.
(使用計画) コロナ禍が終わりつつあるため,次年度の研究費は大半を外国出張費に使用し,残額を研究に必要な文献資料代,研究成果発表のための論文英文校閲代に使用する予定である.

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Graph reliability evaluation via random K-out-of-N systems2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki Mohri and Jun-ichi Takeshita
    • 雑誌名

      Communications in Statistics - Theory and Methods

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1080/03610926.2022.2099897

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Catastrophic failure and cumulative damage models involving two types of extended exponential distributions2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki Mohri and Jun-ichi Takeshita
    • 雑誌名

      International Journal of Reliability, Quality and Safety Engineering

      巻: 29 ページ: -

    • DOI

      10.1142/S0218539321410047

    • 査読あり
  • [学会発表] Examination of the selection method of molecular descriptors to evaluate repeated-dose toxicity using a read-across2023

    • 著者名/発表者名
      Yu Harakawa, Nao Omura, Ryota Shizu, Takuomi Hosaka, Jun-ichi Takashita, and Kouichi Yoshinari
    • 学会等名
      2023 SOT Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] 医薬品開発早期における肝外組織の有害作用評価に利用可能な指標の探索2022

    • 著者名/発表者名
      岩田実咲,皆藤駿之介,保坂卓臣,志津怜太,菅野裕一朗,竹下潤一,吉成 浩一
    • 学会等名
      第5回医薬品毒性機序研究会
  • [学会発表] 薬剤性肝障害の予測・評価におけるシトクロムP450阻害試験データの有用性2022

    • 著者名/発表者名
      皆藤駿之介,岩田実咲,保坂卓臣,志津怜太,菅野裕一朗,竹下潤一,吉成 浩一
    • 学会等名
      第5回医薬品毒性機序研究会
  • [学会発表] 分子記述子を用いたリードアクロスによる反復投与毒性評価手法の開発:予測精度向上に有用な分子記述子の抽出方法の検討2022

    • 著者名/発表者名
      原川ゆう,大村奈央,竹下潤一,志津怜太,保坂卓臣,菅野裕一郎,吉成浩一
    • 学会等名
      日本動物実験代替法学会第35回大会
  • [学会発表] 2値尺度の精度評価試験のための統計的方法とその国際標準化2022

    • 著者名/発表者名
      竹下潤一,鈴木知道
    • 学会等名
      日本動物実験代替法学会第35回大会
  • [学会発表] Comparison among variation measures of ordinal scale data2022

    • 著者名/発表者名
      Ryo Miyazaki, Jun-ichi Takeshita, Shizu Ikada, Tomomichi Suzuki
    • 学会等名
      The 20th ANQ Congress 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] リードアクロスのための数理科学的課題の検討2022

    • 著者名/発表者名
      竹下潤一
    • 学会等名
      第49回日本毒性学会学術年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 薬剤性肝障害評価におけるヒトシトクロムP450阻害試験データの有用性2022

    • 著者名/発表者名
      皆藤駿之介,岩田実咲,佐々木崇光,保坂卓臣,志津怜太,菅野裕一朗,竹下潤一,吉成浩一
    • 学会等名
      第49回日本毒性学会学術年会
  • [学会発表] 用量反応関係を考慮した測定精度に関する研究2022

    • 著者名/発表者名
      木内駿,竹下潤一,伊髙静,鈴木知道
    • 学会等名
      日本品質管理学会第128回研究発表会
  • [図書] ケモインフォマティクスにおけるデータ収集の最適化と解析手法2023

    • 著者名/発表者名
      竹下潤一(他54名)
    • 総ページ数
      657
    • 出版者
      技術情報協会
    • ISBN
      978-4-86104-944-6
  • [備考] Web Page of Jun-ichi Takeshita

    • URL

      https://staff.aist.go.jp/jun-takeshita/

  • [備考] 東京理科大学 創域理工学部 経営システム工学科 鈴木研究室

    • URL

      https://www.rs.tus.ac.jp/ia_suzuki/

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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