水環境中に遍在している疎水性化学物質のマイクロプラスチックへの吸着実態とそのプロセスを評価するための室内実験および野外調査を引き続き実施した。室内実験ではプラスチックの太陽光による劣化に着目して、高密度ポリエチレン粒子を対象とした劣化試験と多環芳香族炭化水素(PAH)の吸着実験を行った。前年度の実験において、光劣化によって吸着量が増加するデータが示されたため、吸着動態を解析するために初期濃度や劣化時間等の条件を変化させながら継続して実験を行った。バッチ試験では劣化の均一性や設定濃度の変動により吸着量の結果にバラツキが見られたものの、全体的に疑似太陽光による劣化処理を行った試料においてより高濃度のPAHを吸着する傾向にあった。一方で、劣化時間が短いサンプルではコントロールと同程度の吸着量であった。 野外調査では、前年より調査地点を増やしながら海岸におけるマイクロプラスチックの調査を継続して実施した。海岸では破片状プラスチックや被覆肥料に由来するカプセル型マイクロプラスチックが多く検出され、ペレット状のプラスチックは少数であった。ポリエチレン、ポリプロピレンのカルボニルインデックスを測定したところ、未使用のプラスチック製品と比較して劣化の進行が示唆された。当初はプラスチックのポリマーとサイズ毎に分別してPAHを測定し、結果を比較する予定であったが、十分な試料量が得られなかったことから、ポリエチレンとポリプロピレンに分けて分析を行った。サンプルは超音波抽出を行い、夾雑物を除去した後に、蛍光検出器付きHPLCでPAH 16成分を測定した。破片状のマイクロプラスチックでは、ポリエチレンとポリプロピレンでは同程度のPAHが検出され、ポリマーによる違いは確認されなかった。
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