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2022 年度 実施状況報告書

マイクロプラスチック含有重量を簡便に測定する手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K12208
研究機関長崎大学

研究代表者

朝倉 宏  長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (00391061)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードマイクロプラスチック / 調査方法 / 蓄積速度 / 重み付け
研究実績の概要

マイクロプラスチック(MPs)による環境汚染が懸念となっており,各国で対策が取られている。汚染状況の把握と,汚染対策によるMPs減少傾向を確認するためには,職業研究者だけでなく,市民を巻き込んだ長期的かつ広範囲なMPs調査が必要である。本研究では,高校生であっても実施可能な簡単な砂浜のMPs調査方法の確からしさを評価した。メジャーと段ボールという簡単な用具による測量では,20 m程度の距離の測量を複数回行うと,ずれの7割は20 cm程度以内に収まった。重液を用いずとも,海水のみであっても89%のMPsを回収できた。砂の表層0.5 cmの採取によるMPs含有量調査であっても,その下50 cm程度まで採取したときの半分以上のMPsの含有量を説明できた。回収したMPsを目視選別せずとも,煮沸後の浮上物をMPsとみなす方法(煮沸法)を採用してもよい。軽石混入の心配がなければ,MPsの過剰な見積もりは約1.5倍に収まった。バケツ,ふるい,海水,ホットプレート,乾燥器,電子天秤などの簡易な実験器具によっても,MPsの定量下限値は13 mg-MPs/m2-砂および2 mg-MPs/kg-砂が達成できた。MPs環境汚染のポテンシャルを表現する漂着速度測定と,複数の砂浜間のMPs存在量の比較を可能にする測定値の重み付けを行った。定点で定期的にMPsを採取測定することによって調査対象地へのMPs蓄積速度を測定したが,信頼できる代表値や明確な傾向は得られなかった。ホットスポットおよび非ホットスポットにおけるMPs含有量を,それぞれの面積で重み付けすることによって,調査対象地全体におけるMPs存在量を「平均値および誤差(mg-MPs/m2-砂)」という代表値とばらつきで示すことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

簡単な器具と方法におけるMPs調査の精度を表現できた。職業研究者だけでなく,高校生を巻き込むことによって環境中MPs存在量のデータが蓄積できれば,長期的なMPs動向を明らかにすることができるであろう。
ホットスポット調査および結果の重みづけによって,調査対象地全体におけるMPs存在量を「平均値および誤差(mg-MPs/m2-砂)」という代表値とばらつきで示すことができた。この方法は,複数の定点調査の平均値や,満潮線上の複数のホットスポット調査の平均値と比べて,唯一,真の代表値を求めようとしている。
ホットスポットおよび非ホットスポットに大きな含有量の差があることが分かった。これらは,マイクロプラスチック研究に従事して1年程度の学生が目視によって判定している。さらには,目視判定の訓練を特に行っていない。それにも関わらず,ホットスポットおよび非ホットスポットにおけるMPs含有量は,明確かつ想定通りに異なった。これは,非専門家が目で見て,MPsが多いと思った場所ではMPs含有量が高く,MPsが少ないと思った場所ではMPs含有量が低いことが再現性高く繰り返されたことを意味する。すなわち,砂浜のMPs目視判定の精度は高い。
以上の重要な知見を得ており,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

測量は人員と時間を必要とした。人員を一名しか必要としないGPSの活用のために,スマートフォンGPSの精度向上に期待したい。
すべてのMPsを調査するために,海水ではなく重液を使用した方が良いのは当然である。今回使用した重液の密度以上の重質MPsを測定できていない。最低でも砂と同体積の重液が必要であり,また,重液の準備にはコストが必要である。重液を必要とする重質プラは無視量であるというデータを蓄積したい。
深いところにMPsが存在しないことが保証されるわけではない。可能であれば,たまに深い部分まで砂を掘削するべきである。海水浴場Aでは,よく海浜清掃が行われていたし,流出した砂を重機で戻していた。海浜の管理活動がMPs調査を困難にすることは皮肉である。MPsが埋まる可能性があるので,砂を移動させる前に清掃すべきであろう。深いところには海水に浮かない重質プラがある可能性があるが,本研究では測定しなかった。むしろ,重質プラを測定すべきであろう。
煮沸後の試料中のMPsを目視で選別したが,それがMPsである保証をしていない。MPsと誤認しやすい物のリストを作成したい。
定量下限値試験は精度の一部を表現しているが,確度を表現していない。図11aに示すように,回収率が低かったことは,確度が低いことを意味する。今後は,広範囲のMPs重量において添加回収試験を行うべきであろう。また,使用したプラスチックは,一種類の素材から選定されており,また,1 mm以下の狭い粒径範囲で調整されている。他の試料についてもデータを蓄積したい。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍において,十分な回数の現場調査を行うことができなかった。この現場調査は遠方を計画していたため,航空機代を使用することが少なく,予算の消化が少なかった。翌年度は,現場調査を継続して予算を利用したい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 海岸底質中マイクロプラスチックの簡易な調査方法の確からしさ2023

    • 著者名/発表者名
      朝倉 宏
    • 学会等名
      令和4年度海洋プラスチックごみ学術シンポジウム

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公開日: 2023-12-25  

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