研究課題
硝酸性窒素による地下水汚染が深刻である地域を対象として,効果的な汚染対策を実施するために,汚染原因を分離する指標物質として糞便汚染指標の一つであるコプロスタノールの利用を提案してきた.しかしながらその河川水中の濃度と地下水中の濃度のレベル間に差が認められ,その要因は土壌や堆積物中における吸着などと予想された.本研究では,こうした関係性を明らかにするためにコプロスタノールの特性について,カラム実験及びフィールド調査に基づき,検討を加えた.すなわち,コプロスタノールの土壌中における反応輸送特性を明らかにするカラム実験を行うことと(目的1),フィールド調査に基づくコプロスタノール測定の有効性の検証(目的2)に分けて実施した.目的1については,コプロスタノールのカラム終端からの流出が通常の溶存物質と異なり,間歇的に流出するなどのため,土,砂,堆積物に対する吸着実験を行い,吸着等温線を求め,土に対する強い吸着が確認された.このためカラム内に充填された土への吸着分布特性を調べるための実験と再設定し,実験を行って,結果を取りまとめた.目的2については,毎月のフィールドにおける採水と硝酸性窒素とステロール類の測定を約2年間継続した.コプロスタノールの検出が間歇的であるのは,カラム実験結果とも整合的であり,その疎水性と吸着特性が効いているものと考えられた.こうしたことからコプロスタノールの測定を一定期間継続して行うことが必要であると考えられた.脱窒のため硝酸性窒素濃度が低減していてもコプロスタノールが検出されている場合は,糞便汚染の兆候が疑われ,その痕跡を示すものと考えられた.また流動経路の上流における土地利用から,その要因の一つは家畜排せつ物であると考えられた.以上のように本研究によってコプロスタノールを測定することによる汚染原因分離を行うことに有効であることが確認された.
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地下水技術
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写真測量とリモートセンシング
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Journal of Environmental Chemical Engineering
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