研究課題/領域番号 |
20K12211
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
加藤 雅彦 明治大学, 農学部, 専任准教授 (00578312)
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研究分担者 |
肴倉 宏史 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 室長 (70331973)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大気曝露 / 乾湿繰返し / 重金属等 / 放出量 / 掘削岩 / 表面変質 / 黄鉄鉱 / 炭酸化 |
研究実績の概要 |
ヒ素を含む掘削岩はトンネル工事等で大量に発生するため,周辺環境にヒ素が溶脱しないように対策し,再利活用が求められている.対策の設計には,掘削岩からのヒ素溶脱量の正確な評価が必要である.掘削岩からのヒ素溶脱は岩表面上に存在する特定のヒ素吸着形態から生じることがわかっている.しかし,溶脱過程において大気曝露等によって岩表面が構造変質しヒ素形態が易溶化するため,正確にヒ素溶脱量が評価できていない.本研究では,溶脱過程におけるヒ素形態の変化を岩表面の構造変質と関連付けながら解明する. 2020年度は,大気暴露条件による表面構造の変質要因を特定するとともに,表面構造の変質量と重金属等の放出量との関係の定量化を試みた.供試掘削岩を日光の当たるガラス温室内で乾湿を繰り返しながら静置し(含水比で5-20%の範囲),経時的にサンプルを回収,重金属等の溶出量,鉱物組成,表面観察などの分析を行った.大気への曝露と乾湿の繰返しによって岩石中の黄鉄鉱の酸化分解が確認された.黄鉄鉱の酸化分解に伴い,系内のpHの減少や非晶質鉄量の増加がみられた.また,鉱物組成の結果より岩種によっては炭酸カルシウムの生成が確認され,炭酸化が起きたことが示された.また石膏の生成も確認された.大気曝露と乾湿繰返しによってセレン,ヒ素,カドミウム,フッ素の放出量は増加し,ホウ素の放出量は減少した.鉛は一時的に放出量が増加したものの,曝露期間が経過すると放出量が減少した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の研究目的は,大気暴露条件による表面構造の変質要因を特定するとともに,表面構造の変質に伴う重金属等の放出量との関係を明らかにすることであった.表面構造の変質要因については,黄鉄鉱の酸化および炭酸化が要因として挙げられた.また,表面構造の変質に伴う重金属等の放出量との関係は表面構造変質に伴って重金属等の種類によって放出量が増減することを定量化できた.そのため,おおむね順調に進展していると考えた.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に開始した大気曝露試験は,2年間継続する予定であるため,2021年度も引き続き行う.また,大気曝露による岩の表面変質と重金属等の放出量との関係をある程度整理できたので,2021年度は還元曝露における表面変質との重金属等の放出量との関係を明らかにすることを試みる.
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