カゲロウ類などの底生動物の科レベルの在不在データから算出される平均スコア(河川環境の良好性の指標)を、河川地点の物理化学的特徴(集水域面積、標高、集水域及び 3 km 周囲の土地利用割合、生物化学的酸素要求量等の水質項目)から予測する重回帰モデルを2022年度に構築した。本年度は、当該データ解析について、使用したデータの確認・整理およびデータ解析の再検証を行った。特に、予測される平均スコアと実際の調査結果から観測される平均スコアに顕著な差異が見られる場合について精査を行い、当該重回帰モデルで考慮できていない水質や河川環境の物理的な改変などが、水生生物相に影響を及ぼしている要因として挙げられた。そのため、今後は地点ごとの評価を重ね、本モデルの有用性や限界を詳細に評価することが重要と考えられる。さらに、前述した解析で用いた239地点の調査データに基づき、底生動物調査において一般的によく用いられる底生動物指標(総種数、総個体数、カゲロウ目、カワゲラ目、トビケラ目の種数及び個体数)と底生動物の平均スコアがどのような関係にあるかについて調査した。その結果、カゲロウ目やカワゲラ目の種数など、多くの指標と高い相関関係にあり(例えば、カゲロウ目及びカワゲラ目種数との相関係数はそれぞれr = 0.66、0.70)、主に簡易的な水質指標として用いられている平均スコアの変化が、水質だけでなくこれらの底生動物指標の変化を示唆することを実際のデータに基づき示した。これらの結果を取りまとめた論文原稿を作成・投稿し、投稿論文はEnvironmental Science and Pollution Research誌に受理、掲載された。
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