研究実績の概要 |
1,3-diphenylguanidine(DPG)は,塩素と反応し塩素化体(DPG-Cl)が副生成される。先行研究によりDPGの反応機構が示されているが,我々は先行研究とは異なる反応機構を推定したため,液体クロマトグラフ-四重極飛行時間型質量分析計(LC-QTOFMS)を用いてDPG-Clの探索を実施した。DPG水溶液を塩素処理しLC-QTOFMS測定したところ,検出されたピークから先行研究の反応機構(脱水して環化)ではなく,酸化的環化による反応機構が推定された。検出されたシグナルを解析した結果,C13H10ClN3をはじめとする複数のDPG-Clが同定された。 我々の調査対象である「残留移動性有機化合物(PMOCs)」は, 残留性と親水性を併せ持つため一旦水環境中に流入すると上下水処理で除去されにくく, 最終的に水道水源水質の脅威となる。本研究では, PMOCsのなかでも高頻度で検出され調査の優先度が高く, 国内の調査事例がないDPGに着目して研究を実施した。まず, 環境中のDPGをはじめとしたグアニジン類縁化合物(以下,DPG類)測定法が未確立であったため, DPG類について環境水中の分析法を確立した。次に, 確立した分析法を用い, 琵琶湖・淀川及び上水・下水中のDPG類調査を実施し, 琵琶湖淀川流域におけるDPG類の濃度レベル及び水環境中の挙動を明らかにした。また, PMOCsは水道水源水質の脅威であることから, DPG類の高度浄水処理における挙動を調査した。Cyanoguanidine(CG)以外のDPG類は高度浄水処理で除去可能であるが, CGは異なる挙動を示すことが明らかになった。近畿約1400万人の水道水源である淀川流域について, DPG類の存在実態の把握, 更に高度浄水処理における挙動を明らかにした。今後, DPG類のリスク評価への活用が期待できる。
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