研究実績の概要 |
汚染土壌を無害化する処理方法の一つに熱処理が挙げられる. 熱処理とは、土壌が溶融しない温度 (数百~1000℃程度) で加熱し,土壌に含まれる有害物質を脱着,分解あるいは不溶化させる方法であり、有機系汚染と重金属汚染を同時に無害化できる効率的な処理方法である。これまで、熱処理を適用する際の温度変化による、土壌中の重金属の動態は未解明な部分が多く、重金属の揮発および溶出挙動への影響に関する知見が不足している。本研究では、熱処理による土壌からの鉛とヒ素の溶出・揮発の仕組みを、モデル土壌と実汚染土壌を用いて、化学形態の観点から明らかにしていくことを目的とする。今年度は、鉛、ヒ素を選択的に吸着するフェリハイドライトを用いたモデル土壌を調製し、100から1200oCの熱処理をマッフル炉で実施し、鉛の溶出を追跡した。合成したフェリハイドライトを硝酸鉛(II)溶液 (pH5) に48時間分散させることによって鉛を吸着させて、その後乾燥して末状の試料を得た。この試料を、管状電気炉で熱処理した (6時間)。加熱温度は100から600℃までの100℃間隔で設定した. 熱処理前および各温度で熱処理した試料に対し,液固比100,振とう時間6時間の条件で水抽出試験を行った。モデル土壌からの鉛の溶出が、300℃付近で急減する傾向がみられた。放射光X線分光法を用いて、熱処理の過程で鉛の化学形態の変化を追跡するための実験を計画した。鉛の化学形態が既知の標準試料を合成または購入し、今後分析をするための準備を実施した。
|