研究課題/領域番号 |
20K12216
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
橋本 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80436899)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 土壌汚染 / 熱処理 |
研究実績の概要 |
汚染土壌を無害化する処理方法の一つに熱処理が挙げられる. 熱処理とは、土壌が溶融しない温度で加熱し、土壌に含まれる有害物質を脱着、分解あるいは不溶化させる方法であり、有機系汚染と重金属汚染を同時に無害化できる効率的な処理方法である。これまで、熱処理を適用する際の温度変化による、土壌中の重金属の動態は未解明な部分が多く、重金属の揮発および溶出挙動への影響に関する知見が不足している。本研究では、熱処理による土壌からの鉛とヒ素の溶出・揮発の仕組みを、モデル土壌と実汚染土壌を用いて、化学形態の観点から明らかにしていくことを目的とする。 今年度は、鉛を含む実汚染土壌を用いて、100から900oCの熱処理を適用し、鉛の溶解性や化学形態を、それぞれ抽出実験とX線分光法を用いて分析した。熱処理温度の増加によって、土壌からの鉛の水溶解性が低下する傾向が見られた。処理温度900oC では、鉛の溶出が見処理と比較して90%程度低下することが分かった。熱処理した土壌に塩酸を添加して、鉛を抽出する実験を実施したところ、900oCの処理で溶出量が著しく低下した。この結果は、熱処理によって土壌の鉛が、塩酸のような強酸で抽出されない化学形態に変化したことが示唆された。熱処理した土壌に含まれる鉛の化学形態は、300oC付近で変化が見られた。この結果は、鉛の溶出挙動が300oC付近を境界として低下する現象と一致していた。熱処理温度が300oC付近で、土壌に含まれている鉛のうち、有機物と結合している形態や、炭酸鉛のように熱分解を受ける化学種の占める割合が低下することが確認された。熱処理温度が900oCの高温になると、土壌のアルミナケイ酸塩鉱物が融解し、鉛が取り込まれて不溶性の化合物を形成することも確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID19の影響で、初年度と次年度の実験が計画通りに実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
得られた結果を取りまとめて、学会誌に論文として報告することを目的として、今後の研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に必要な試薬や分析のための出張旅費等の支出が、当初の計画と異なったため。次年度は本予算を実験に必要な消耗品(ガス類や試薬など)に使途する。
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