研究実績の概要 |
汚染土壌を無害化する処理方法の一つに熱処理が挙げられる. 熱処理とは、土壌が溶融しない温度 (数百~1000℃程度) で加熱し,土壌に含まれる有害物質を脱着,分解あるいは不溶化させる方法であり、有機系汚染と重金属汚染を同時に無害化できる効率的な処理方法である。本研究では、熱処理による土壌からの鉛の溶出・揮発の仕組みを、モデル土壌と実汚染土壌を用いて、化学形態の観点から検証した。
土壌中に普遍的に存在する酸化物であるフェリハイドライトに鉛を吸着した試料を100から1200oCの熱処理し、鉛の化学形態を明らかにした。熱処理温度の増加によって、鉛が吸着したフェリハイドライトの質量が減少し、1000oCの処理で約20%減少することが分かった。フェリハイドライトに吸着した鉛の化学形態は、300oC付近で変化が見られ、フェリハイドライトへの内圏表面錯体から、酸化鉛(PbO)への変化が確認された。この結果は、鉛の水溶解性が熱処理温度が300 oCを超えた辺りで急減した現象と一致している。
鉛を含む実汚染土壌を用いて、100から900oCの熱処理を適用し、鉛の溶解性や化学形態を明らかにした。熱処理温度の増加によって、土壌からの鉛の水溶解性が低下する傾向が見られた。処理温度900oC では、鉛の溶出が見処理と比較して90%程度低下することが分かった。熱処理した土壌に塩酸を添加して、鉛を抽出する実験を実施したところ、900oCの処理で溶出量が著しく低下した。熱処理した土壌に含まれる鉛の化学形態は、300oC付近で変化が見られた。熱処理温度が900oCの高温になると、土壌のアルミナケイ酸塩鉱物が融解し、鉛が取り込まれて不溶性の化合物を形成することも確認された。最終年度は追加の実験を実施しながら、これらの主要な成果を中心とした論文の執筆を進めた。
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