本研究は、ウキクサ亜科植物根への付着・定着性が高い微生物種を検索し、その中から各種分解菌やPGPBを取得・利用することにより新しい植生浄化システムの開発につなげることを目的としている。 ウキクサ亜科植物の根に付着・定着しやすい微生物種の検索については、様々なウキクサ亜科植物の根に生息する微生物群集を解析・比較することで、昨年度までにMethylophilus属など計11属の候補を見出したが、本年度は過去データを含め、さらに多くのウキクサ亜科植物根(様々な環境試料を接種したウキクサ、異なる培地条件で生育させたウキクサ)に生息する微生物群集データ間の比較をすることで、Methylophilus属細菌、Methylibium属細菌などのC1化合物資化性細菌が高頻度で分布することを明らかにした。このうち、Methylophilus属細菌に関しては昨年度までに100株以上の取得に成功し、その中からウキクサ亜科植物(コウキクサ)の生育促進効果を有する菌株として7株を得ていたが、本年度はそれらの菌株における生育促進活性の安定性をチェックし、5株に当該活性が安定的に分布することを確認した。また、門レベルでウキクサ亜科植物との親和性が示唆されたVerrucomicrobiota門に属する菌株の中から、ウキクサ亜科植物のPGPBに該当する1株を見出した(この菌株は当該門に属するウキクサ亜科植物のPGPBとしては初の報告例となる)。さらに、科レベルでウキクサ亜科植物に高頻度で生息することが確認されたComamonadaceae科に属し、かつ、フェノール分解活性を有する研究室保存菌株(ウキクサ由来)を無菌のウキクサに導入することで、根圏機能を強化したウキクサの作出を試みた。
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