研究課題/領域番号 |
20K12220
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
後藤 知代 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60643682)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水酸アパタイト / 結晶形態 / 水熱合成 |
研究実績の概要 |
水酸アパタイト(HAp)は、骨の無機成分として知られるリン酸カルシウムの一種であり、優れた生体親和性を有するとともに、結晶面に依存する選択的な有機物吸着特性や、陽陰イオン交換特性を示すことが知られている。これらの特性を利用すれば、水や大気汚染物質を除去する環境浄化材料としての利用が期待される。本研究では、水熱合成法を利用し結晶形態・構造を制御したHApの合成と、汚染物質吸着により光特性が変化するインジケータ型環境浄化材料の開発を目的とする。 2020年度では、水熱法により種々の形態を有するHApの合成を試みた。特異な結晶形態を得る目的で、カルシウム原料にポリリン酸を加えて種々の温度で水熱合成を試みた。その結果、数十nm程度の細かな鱗片状結晶の集合体や明確な六角柱状結晶を得ることに成功した。ポリリン酸濃度が高いほど結晶サイズは小さくなる傾向が見られた。ただし、試料中において複数の形態が混在する様子が観察された。さらに、HApのみならず一部に原料由来の結晶相の残存も見られたことから、反応が不均一であることが示唆された。そこで今後は、得られる結晶形態および結晶相が均一となるよう、攪拌等の処理条件を調整することで、ひきつづき実験を実施予定である。 さらに、HAp結晶は特異な吸着特性を有することから、環境浄化用の触媒担体としての応用が期待でき、HAp結晶の形態による表面積やゼータ電位の違いと、有機分子の吸着特性変化を調べた。特に2020年度では、本研究に関連してHAp結晶形態と吸着特性の関係、および環境浄化材料としての応用についての研究成果を論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、これまでの知見を利用しつつ水熱合成法による水酸アパタイト(HAp)結晶の形態制御の検討をおおむね進めることができている。一方で、特に年度当初は、コロナ禍により実験活動・進捗の遅れが生じるとともに、国際会議や学会開催や学外実験の出張等も中止になった影響で全体的にはやや遅れている。2020年度に実施を予定していた水熱合成によるHAp結晶の形態制御は、研究代表者が長年取り組んできた研究テーマの一つであるため、今後は、これまでの研究成果・知見とも照らし合わせて、効率的に実験を進める予定である
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今後の研究の推進方策 |
2020年度までに得られた実験結果について、さらに検討を進めることにより結晶形態および結晶相が均一な合成条件を決定するとともに、鱗片状や六角柱状以外の結晶形態についても合成する。得られた各結晶の構造やCa/P比を調べるとともに、環境浄化材料としてのイオン交換反応や吸着に影響する比表面積やゼータ電位を測定するとともに、光学特性についても評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、これまで他の実験で使用していた試薬・備品を活用して合成試験を効率的に進めることができたとともに、コロナ禍により国際会議・学会参加や学外実験等の出張が無くなり、実験進捗に遅れが出たことも影響して次年度使用額が発生した。 2021年度は、ひきつづき旅費の使用は難しいと考えられることから、次年度使用額を翌年度分とともに実験および分析のための消耗品・物品購入費および依頼分析費に使用するとともに、得られた結果を論文として報告するための英文校正料等として使用予定である。
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