研究実績の概要 |
昨年度までの研究で高い触媒作用を示すことが明らかとなったCu-Ni、Cu-Mo、Cu-Rhの各2元系触媒について、XPS、窒素吸着法、TEM、およびエネルギー分散型X線分光法(EDS)による触媒の分析を行うことで、触媒作用向上メカニズムの解明を試みた。 まず、各触媒を用いて1,4-ジオキサン(DO)の水熱酸化分解を行ったところ、3,4-ジクロロフェノールの場合と同様、いずれの触媒もCu単元触媒より高い触媒作用を示すことを確認した。次に使用前触媒のXPS分析の結果から、Cu-Ni触媒のCu還元種の割合はCu触媒よりも高く、一方でCu-MoとCu-Rh触媒はCu触媒と同様の酸化状態であることが分かった。また、EDSの結果よりCu-MoとCu-Rh触媒ではCu、MoおよびRhが触媒上で均一に分布することが確認され、一方でCu触媒やCu-Ni触媒ではCu種の凝集が確認された。 使用後触媒のXPSの結果から、Cu-Ni、Cu-Mo、およびCu-Rh触媒はCu触媒よりもCu還元種の割合が高いことが分かった。窒素吸着法による表面構造評価では、Cu-MoとCu-Rh触媒が他の触媒に比べて高い比表面積を維持したことが分かった。 最後に、各触媒を用いてDOの水熱酸化処理を行った時のTOC除去率と各使用後触媒のCu還元種の割合の関係について検討したところ、両者の間に相関関係があることが分かった。Cu-Ni触媒は触媒合成時にCu還元種の割合が高くなったことにより、分解反応中も高いCu還元種の割合を維持したと考えられる。一方、Cu-MoとCu-Rh触媒は触媒合成時にはCu触媒と同様の酸化状態であったが、200℃、10 MPaの反応条件下でCu触媒ほどCu還元種割合の低下が起こらなかったと考えられる。この理由として、EDSの分布からも、CuとMoおよびRhとの間での電子移動が起こった可能性が考えられる。
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