研究課題/領域番号 |
20K12224
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
大倉 利典 工学院大学, 先進工学部, 教授 (70255610)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放射性物質 / ガラス固化 / リン酸塩ガラス異常現象 / 分相リサイクル |
研究実績の概要 |
本研究では,環境中に飛散したCsの回収・処理を目指し,リン酸塩ガラスを用いてCs吸着粘土鉱物をガラス固化することに加え,溶媒抽出によるCsの選択的な溶出・回収の可能性を検討することを目的とした. MgO-P2O5ガラスにCs吸着粘土鉱物(CsKa)を加え,1450℃で溶融することで,ガラス固化体を作製した.そのガラス固化体の熱的安定性を評価し,ガラス相と結晶相に相分離し易い組成を検討した.CsKaを10mass%固化した試料のDTA曲線からTg(ガラス転移温度),Tx(結晶化開始温度)を決定し,Tx-TgとしてΔTを算出した.ΔTはガラス状態の安定性を示す指標である.MgOの割合が増えるにつれ,ΔTが低下した.Mgが網目修飾イオンとして働き,ガラスのネットワークを切断し,構造の再配列が起こり易くなった為と考えられる.このことから,MgOの割合が増えるとガラス相と結晶相に相分離し易くなる傾向があると考えられる. 熱処理を行い相分離させた固化体に対し,酸性・中性・塩基性の3つの条件の浸漬液を用いて浸漬実験を行った.XPSの結果を基に,浸漬前後の各成分の固相への残存率を算出したところ,いずれの条件下でもCsの溶出がみられた.特に酸性条件下では,CsはXPSの検出下限以下まで溶出した.それに対し,Pはいずれの条件下でも80~100%程度,固相に保持されていた.相分離したガラス固化体は,酸性条件の浸漬実験で100%のCsが溶出したのに対し,Pは80%程度固相に保持され,溶出によるガラス形成成分とCsの分離の可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相分離したガラス固化体は,酸性条件の浸漬実験で100%のCsが溶出したのに対し,Pは80%程度固相に保持され,溶出によるガラス形成成分とCsの分離の可能性が示唆されたため.
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今後の研究の推進方策 |
1. Csの抽出回収方法の確立 固化ガラスをTg以上で熱処理し,分相結晶化(結晶相とガラス相)によってできる各相の化学的耐久性の違いから,熱水・酸溶出法によりCsの抽出,およびPの回収を行う. 2. ガンマ線照射 放射性物質を閉じ込めることにより,ガラス固化体自体が放射線を常に照射されている状態になる.放射線のなかでもアルファ線はガラス固化体に最も影響を与えるが,アルファ線を照射すると試料が放射化して危険なため,本実験では透過率が高いガンマ線(Co-60)をガラス固化体に照射し,その影響を調べる.照射後の試料に対して,浸出試験,FT-IR測定,Laser Raman測定を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い,研究活動および国内外における学会出張に制約が生じたことが主な理由である。次年度はオンライン形式での研究発表なども積極的に実施する予定である。
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