本研究では,粘土鉱物(カオリナイトKa,モンモリロナイトMts)に分極処理を行うことで,Cs吸着能の向上を試みた.また,長期安定的な保管のため,Csを吸着させ焼成を行った粘土鉱物のMgO-P2O5(MP)ガラスへの固化を検討した. 400℃,50V/mmで分極処理を行った粘土鉱物の蓄積電荷量は,Kaは2μC/cm2,Mtsは109μC/cm2となった.蓄積電荷量に差が見られたのは,Kaは陽イオンをもたないのに対し,MtsはCa2+やNa+,Mg2+などの陽イオンをもっているためと考えられる.分極処理を行ったMtsと,400℃で加熱のみ行った未分極のMts,また加熱を行っていない未処理のMtsに対してバッチ試験を行い,分極処理の効果を調べた.分極処理前後では,Cs吸着量にほとんど変化がなく,分極Mtsを含む加熱した試料は,未処理MtsよりもCs吸着量が小さくなった. 次に,Csを吸着させた粘土鉱物を1200℃,3時間で焼成し,Csの固定化を試みた.焼成によりCsKaはムライトが生成したが,CsMtsではポルサイトが生成したため,CsMtsはCsの固定化ができたと考えられる.CsKaでポルサイトの生成を確認できなかったのは,KaのCs吸着量が小さいことが考えられる. さらに,MPガラスを用いて,焼成済みCsMtsのガラス固化範囲を調べたところ,最大で30mass%程度のCsMtsを固化できることがわかった.固化体の熱的安定性はリンの割合が多くなるにつれて増加する傾向が見られ,CsMtsの含有量が増えると減少した.焼成によるCsの固定化がCs揮発率にどのような影響があるか確認するため、蛍光X線分析を行った。溶融前にCs吸着粘土鉱物を焼成する ことによりCs揮発率は小さくなる傾向が見られた。また、母ガラス組成のMgO比が大きくなるほどCs揮発率は小さくなる傾向が見られた。
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