研究課題/領域番号 |
20K12225
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
井関 正博 東邦大学, 理学部, 教授 (90780908)
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研究分担者 |
今野 大輝 東邦大学, 理学部, 講師 (40825832)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 難分解性物質 / 有機フッ素化合物 / 電気分解 / 吸着 / 多孔性錯体結晶 / 濃縮分解 |
研究実績の概要 |
水質浄化技術の一つである電解酸化法は、様々な汚染物質に対して有効な分解技術であることが既に多くの研究者によって報告されているが、希薄濃度の水溶液系に適用しようとした場合、この手法は投入エネルギーの多くが水の分解に消費されてしまうため、エネルギー効率の点で改善の余地がある。そこで本研究課題では、希薄な水中汚染物質の吸着剤として多孔性錯体結晶を利用し、この結晶が持つ高い吸着機能と電解酸化反応を組み合わせることで、汚染物質を濃縮した後に酸化分解することが可能な、新しい高効率水質浄化プロセスの設計指針を確立することを目的としている。 令和2年度の研究実施計画では、まず吸着分解を実証することにした。対象物質としては、超難分解性物質で発がん性が指摘されているペルフルオロオクタン酸(PFOA)とした。吸着材としては、PFOAに対する高い吸着力を有するZIF-8を用いた。 ZIF-8を用いた吸着実験では約9割のPFOAの吸着を確認した。その後続けて行う電解実験におけるPFOAの無機化率は32.5%となった。これはPFOA単体で電解実験を行ったときの無機化率(45.7%)と比較すると無機率が低下しており、供給したエネルギーがZIF-8の分解に用いられたことが原因として考えられた。そこでZIF-8は強酸条件下で構造が壊れるという特性を利用し、酸による前処理を行った後に電気分解を行った。酸処理を行うとpH2以下でPFOAが解離しなくなり、電解の効率が下がるため、塩基を加え中和を行った。この結果、酸→塩基処理を行った方が前処理無しよりも無機化率が約15%向上し、前処理の有効性が証明できた。また、エネルギー効率を算出すると酸→塩基処理を行った方が高くなった。これはZIF-8を酸によって予め壊すことで、PFOAの分解にエネルギーが使われ、PFOAの無機化量が向上したためであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度であるため、現在までの進捗状況は、研究実績の概要と同等である。おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今回のZIF-8を用いたPFOAの吸着電解実験の結果、酸→塩基処理という前処理を行うことにより、ZIF-8による吸着後のPFOAが、PFOA単体に比べて同等のエネルギー効率で無機化できることが明らかとなった。この研究の次の目標は、ZIF-8を用いてPFOAの濃縮を行い、その濃縮されたPFOAが希薄なPFOAに比べて高効率に分解できることを実証することである。今回確立した実験条件で濃縮されたPFOA+ZIF-8を試料に用いることで、高効率な濃縮電解技術の確立を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は計画以上の研究加速を行う予定で予算請求を行っていたが、コロナ禍により計画以上の研究加速は実施できなかった。それに伴い、余剰金が発生した。この次年度使用額は2021年度の助成金と合わせ、2021年度の目標である高効率な濃縮電解技術の確立に使用する予定である。
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