研究課題/領域番号 |
20K12226
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
渡辺 雄二郎 法政大学, 生命科学部, 教授 (60410297)
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研究分担者 |
田村 堅志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (80370310)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | セシウム / ストロンチウム / ゼオライト / 雲母 / アパタイト / 複合体 / 吸着 / 放射性物質 |
研究実績の概要 |
福島第一原発の廃炉作業では燃料デブリの早期取り出しが緊急課題となっている。しかし取り出しには30年以上の長期間を要し、炉内環境中での長期的な安全保管対策と共に、環境中への核種移行遅延防止対策が必要となる。本研究では、環境中への漏出時の137Csと90Srに対して高選択性を有する粘土鉱物/アパタイト複合体を開発し、燃料デブリ由来の汚染水中の137Cs, 90Sr同時回収・安定化法の検討を行っている。本年度は2020年度の一定条件での複合体の作製とセシウムイオン及びストロンチウムイオンの吸着実験の結果を踏まえて、カルシウム型雲母の作製とリン酸アンモニウム水溶液によるアパタイト化を検討した。また、雲母への多価カチオン(アルミニウムイオン, 鉄イオン)の導入とセシウムイオンとストロンチウムイオン吸着能の評価を行った。その結果、ナトリウム型からカルシウム型雲母への転換条件を明らかにでき、また、多価カチオンを導入したカルシウム型雲母上にアパタイトを形成できることを明らかにした。得られたアパタイト結晶は約100nmの針状結晶であり、カルシウム/リンモル比はアパタイトのカルシウム/リンモル比である1.67に近い値であった。さらに、雲母への多価カチオン導入によりストロンチウムイオンの吸着能を保持したまま、低濃度のCsの吸着能力(吸着率99.7%)が向上することがわかった。 以上の結果は、低濃度の放射性セシウムの吸着能力(選択性)が向上したことを示し、雲母への多価カチオン導入の有用性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに2021年度の実施内容を推進できているため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はゼオライトまたは雲母とアパタイトとの複合体の作製に成功し、Cs、Srの吸着能の評価を行った。今後は最適化されたゼオライト/雲母/アパタイト複合体を作製し、CsとSrの吸着および溶液安定性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響が続き、本年度も予定していた学会が中止やリモートとなり、計上していた予算を使用できなかった。2022年度は口頭でのいくつかの発表を予定しており、その旅費に利用する。また、セシウム測定に必要なICP-MS装置の検出器(備品)の購入に使用する。
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