研究課題/領域番号 |
20K12228
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
大野 正貴 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 助教 (40781216)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 逆浸透膜 / 膜ファウリング / 生物膜 / スケール / ナノバブル / 次亜塩素酸ナトリウム / ファウリング制御 |
研究実績の概要 |
逆浸透(RO)膜処理において微生物の生物膜や無機塩のスケールによる膜の目詰まり(ファウリング)は深刻な問題である。本研究課題では、RO膜における生物膜とスケールによる複合的なファウリングの制御において次亜塩素酸ナトリウム(以降、塩素)とナノバブルを併用した洗浄手法を開発すると同時に、生物膜除去におけるスケールの存在影響を評価し、制御メカニズムの解明を達成する。これに加えて、本洗浄手法を適用した長期間の膜ろ過運転の実証から安定性を評価することを目的としている。 これまでの成果として、生物膜とスケールによる複合ファウリングの洗浄条件として洗浄剤の種類および洗浄時の操作圧力の効果について検討し、操作圧力が低いほど洗浄効果が向上することが示された。洗浄剤の種類の検討から、ナノバブルと塩素による単独の洗浄よりも併用した洗浄で洗浄効果が向上した。ナノバブル洗浄と塩素洗浄を二段階で行う試験から、ナノバブル洗浄後に塩素洗浄を行う場合で洗浄効果がより増加することが確認され、ナノバブルが塩素による薬品洗浄の効果を相加的に向上させることが明らかとなった。さらに、塩素とナノバブルを併用した本洗浄手法におけるファウリング制御の長期安定性を検討し、膜処理運転(ファウリングが発生)と洗浄の繰り返し試験による膜性能の安定性の評価から、ナノバブルと塩素を併用して洗浄時の操作圧力を無加圧で洗浄したところ、5回の繰り返し洗浄後でも膜性能を初期値から90%以上維持でき、本洗浄手法を適用することで生物膜とスケールによる複合ファウリングを長期安定的に制御できることが明らかになった。 これらの成果は第55回日本水環境学会年会、The Water and Environment Technology Conference 2022、及び膜工学サロン(招待講演)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、生物膜とスケールによる複合ファウリングの制御において次亜塩素酸ナトリウム(以降、塩素)とナノバブルを併用した洗浄手法を開発すると同時に、生物膜除去におけるスケールの存在影響を評価し、制御メカニズムの解明を達成する。これに加えて、本洗浄手法を適用した長期間の膜ろ過運転の実証から安定性を評価することを目的とし、次世代に向けた持続可能なRO膜処理システムの確立を目指している。本研究の計画として、複合ファウリング制御における塩素とナノバブルの併用洗浄手法の開発、生物膜除去におけるスケールの役割の解明、塩素とナノバブルの併用洗浄を適用した膜処理システムの実証と安定性評価の3項目を設定し、実施している。 2020年度は、複合ファウリングの洗浄条件について検討し、ナノバブルと塩素の併用洗浄において操作圧力が低いほど洗浄効果が向上することが明らかとなった。2021年度は、前年度の検討で見出した洗浄条件に基づいて塩素とナノバブルを併用した本洗浄手法における複合ファウリング制御の長期安定性の評価について、膜処理運転(ファウリングが発生)と洗浄の繰り返し試験による純水透過流束(Flux)の安定性を評価し、当初の研究計画を概ね達成した。ナノバブルと塩素を併用し、洗浄時の操作圧力を無加圧で洗浄したところ、5回の繰り返し洗浄後の膜透過性能を約90%に維持でき、本洗浄手法を適用することで複合ファウリングを長期安定的に制御できることを明らかにした。2022年度は、ナノバブル洗浄と塩素洗浄を二段階で行う検討から、ナノバブル洗浄後に塩素洗浄を行う方式では、塩素洗浄後にナノバブル洗浄を行う方式よりも洗浄効果が増加することが確認され、ナノバブルが塩素による薬品洗浄の効果を相加的に向上させることを明らかにした。しかし、当初計画していた実際の排水及び海水を用いた実証試験の実施には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の計画として、引き続き塩素とナノバブルの併用洗浄手法の開発において、洗浄条件として洗浄時の時間等の物理的な条件を検討する。これに加えて、本洗浄手法が多様化する水源に対しても複合ファウリングを制御可能か評価するため、繰り返し洗浄による運転安定性を評価する。ここでは、実際の高塩濃度排水として下水処理水が流入した沿岸域の汽水を原水として連続ろ過試験を行い、ファウリングと洗浄を10回程度の繰り返し行うことで本洗浄手法の安定性を評価する。これにより、実証水源における塩素とナノバブルの併用洗浄を適用した複合ファウリング制御を確立することで、本膜処理システムの社会的効果を解釈、評価する。また、生物膜除去におけるスケールの役割の解明について検討する。具体的には、ここまでの検討から見出した最適洗浄条件において、膜面上の生物膜量に対するスケール形成量を変化させた複合ファウリングに対して洗浄効果を評価する。生物膜量に対するスケール形成量を変化させる要因としては、原水中のスケール成分濃度および膜ろ過における純水回収率とする。複合ファウリングにおけるスケールの存在が生物膜除去に及ぼす影響を評価することで、塩素とナノバブルを併用した複合ファウリングの制御メカニズムの解釈・明確化する。これにより、本洗浄手法において制御でき得る限界の複合ファウリングの強度を明らかにし、ファウリング強度の決定要因である原水中の微生物密度および無機イオン濃度等としてのRO膜への導水許容レベルを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に計画していた、本研究で開発した複合ファウリング制御手法における実際の排水及び海水を用いた実証試験の実施に至っておらず、次年度に延長して実施したいため。
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