逆浸透(RO)膜処理において微生物の生物膜や無機塩のスケールによる膜の目詰まり(ファウリング)は深刻な問題である。本研究課題では、RO膜における生物膜とスケールによる複合的なファウリングの制御において次亜塩素酸ナトリウム(以降、塩素)とナノバブルを併用した洗浄手法を開発すると同時に、生物膜除去におけるスケールの存在影響を評価し、制御メカニズムの解明を達成する。これに加えて、本洗浄手法を適用した長期間の膜ろ過運転の実証から安定性を評価することを目的とした。 本研究における成果として、生物膜とスケールによる複合ファウリングの洗浄条件として洗浄剤の種類および洗浄時の操作圧力の効果について検討し、操作圧力が低いほど洗浄効果が向上することが示された。洗浄剤の種類の検討から、ナノバブルと塩素による単独の洗浄よりも併用した洗浄で洗浄効果が向上した。ナノバブル洗浄と塩素洗浄を二段階で行う試験から、ナノバブル洗浄後に塩素洗浄を行う場合で洗浄効果がより増加することが確認され、ナノバブルが塩素による薬品洗浄の効果を相加的に向上させることが明らかとなった。さらに、塩素とナノバブルを併用した本洗浄手法におけるファウリング制御の長期安定性を検討し、膜処理運転(ファウリングが発生)と洗浄の繰り返し試験による膜性能の安定性の評価から、ナノバブルと塩素を併用して洗浄時の操作圧力を無加圧で洗浄したところ、5回の繰り返し洗浄後でも膜性能を初期値から90%以上維持でき、本洗浄手法を適用することで生物膜とスケールによる複合ファウリングを長期安定的に制御できることが明らかになった。 これらの成果は第57回日本水環境学会年会、The Water and Environment Technology Conference 2022、及び膜工学サロン(招待講演)において発表した。
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