研究課題/領域番号 |
20K12229
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
西村 聡子 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (90609322)
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研究分担者 |
飯島 信司 愛知工業大学, 工学部, 教授 (00168056)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生物的硝化・脱窒 / アンモニア酸化細菌 / 脱窒菌 / バイオフィルム / 環状ジグアニル酸 |
研究実績の概要 |
生活・工業廃水中に含まれ環境問題を引き起こす窒素化合物を処理する方法として、微生物を用いた生物学的硝化・脱窒法が広く利用されている。このうち硝化・脱窒過程においてそれぞれ重要な役割を果たしているアンモニア酸化細菌Nitrosomonas europaeaおよび脱窒菌Paracoccus denitrificansは、排水処理プラント内でバイオフィルムを形成すると考えられる。本研究では、これらの細菌のバイオフィルム形成制御機構を明らかにすることで、生物的硝化・脱窒過程の高効率化をめざす。 1)c-di-GMP合成・分解酵素の解析: 多くの細菌において環状ジグアニル酸(c-di-GMP)がバイオフィルム形成制御に関わることから、前年度に引き続き、アンモニア酸化細菌および脱窒菌のc-di-GMPの代謝関連遺伝子のクローニングを進めた。遺伝子解析の結果から、アンモニア酸化細菌にはc-di-GMP合成酵素が3種、分解酵素が5種存在すると考えられ、また脱窒菌ではそれぞれ2種存在すると考えられる。このうちクローニングが完了した遺伝子について、タンパク質発現を確認し、その解析を進めている。 2)アンモニア酸化細菌の遺伝子導入に向けた検討: 通常細菌にプラスミドを導入するにあたってはコロニーの単離が必要となるが、アンモニア酸化細菌は難培養性であり、固体培地でコロニーを形成させることが難しい。今回、培養条件の検討により、固体培地上でのコロニー形成に成功したが、さらに効率向上に向けて検討中である。 3)細菌内c-di-GMPの定量法の確立: 細菌内に極微量に存在するc-di-GMPを定量するため、HPLC法およびELISA法を検討し、細菌抽出液内のc-di-GMP濃度の測定を可能とした。今後この方法を用いて、アンモニア酸化細菌および脱窒菌のc-di-GMP合成・分解酵素活性を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)c-di-GMP合成・分解酵素遺伝子のクローニングおよび発現確認: 前年度に引き続き、アンモニア酸化細菌N. europaeaおよび脱窒菌P. denitrificansの環状ジグアニル酸(c-di-GMP)合成・分解酵素遺伝子のクローニングを進めた。このうちクローニングが完了したものについて、得られた発現プラスミドを大腸菌に形質転換し、大腸菌でのタンパク質発現をSDS-PAGEおよびimmunoblotting法により確認した。残りの遺伝子についても順次クローニングを進めている。 2)アンモニア酸化細菌の遺伝子導入に向けた検討: 培養条件の改良により、固体培地上でのアンモニア酸化細菌のコロニー形成に成功した。しかしまだ形成効率は高くないため、効率向上に向けてさらに条件検討を行っている。またアンモニア酸化細菌は極めて増殖が遅く、従来のOD測定による確認が難しいため、増殖条件をより詳細に検討するには細菌増殖を確認する別の方法が必要となる。ここではアンモニア酸化細菌の培養液中のアンモニア濃度の定量を行い、増殖の指標となることを確認した。 3)細菌内c-di-GMPの定量方法の確立: 細菌の破砕・抽出液を用い、HPLC法およびELISA法による細菌内c-di-GMPの定量を行った。現在さらに定量性を高めるため種々の条件検討を行っている。今後この方法を用いて、アンモニア酸化細菌および脱窒菌のc-di-GMP合成・分解酵素の活性を解析していく。 これらのことから、おおむね計画通り推移しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
アンモニア酸化細菌N. europaeaおよび脱窒菌P. denitrificansの環状ジグアニル酸(c-di-GMP)合成・分解酵素遺伝子のうち、クローニングが完了したものについては引き続きタンパク質発現解析および酵素活性の検討を行うと共に、残りの遺伝子についてもクローニングを進める。遺伝子解析の結果から、アンモニア酸化細菌についてはc-di-GMP合成酵素ドメインと分解酵素ドメインの両者をあわせもつ遺伝子が存在すると考えられることから、それらの遺伝子についてもクローニングと活性解析を行う。またレポーターアッセイおよび定量PCRなどの方法により、これらの遺伝子の発現状態について解析する他、これらの遺伝子の近傍に存在する遺伝子について、バイオフィルム形成能との関連を調べる。 またこれらの遺伝子の大腸菌での発現解析の他、アンモニア酸化細菌および脱窒菌においてこれらの遺伝子の欠失株あるいは過剰発現株を作成し、その活性を解析する。そのため、引き続きアンモニア酸化細菌および脱窒菌への遺伝子導入法の検討を進める。欠失株または過剰発現株を得た後、それらにおけるバイオフィルム関連遺伝子、脱窒過程やその調節に関わる遺伝子の発現変化を解析する。これらの検討により、c-di-GMPのバイオフィルム形成および脱窒能への関与を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な物品・試薬を購入し、端数が生じたため、次年度使用を希望する
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