研究課題/領域番号 |
20K12230
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研究機関 | 東京都立産業技術高等専門学校 |
研究代表者 |
池田 宏 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (50332002)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロバブル / 超音波振動 / 環境調和型 / 機械部品 / 洗浄法 |
研究実績の概要 |
工業製品の洗浄において環境に配慮した洗浄法の開発が望まれており,マイクロバブルが汚水の浄化に用いられてきた.近年,超音波洗浄とマイクロバブル洗浄の欠点を補えるような新しい洗浄技術の一つとして,マイクロバブルと超音波を併用した超音波音場でのマイクロバブルによる洗浄法の有効性の一部が国内外の学会で報告されているが,新規な洗浄法の開発までには至っていない.本研究は,機械部品の洗浄において,マイクロバブルと超音波振動を活用することにより,洗浄水の汚染低減を行う環境調和型の洗浄法を開発し,この併用した場合の洗浄方法のメカニズムを解明することを最終的な目的としている. 初年度には,超音波振動とマイクロバブルを併用した洗浄実験と洗浄水の濁りの測定法の確立を中心に,超音波音圧計を用いて超音波振動が確実に試料まで伝わっているかの検証や周波数変化に伴う超音波振動とマイクロバブルを併用した場合の洗浄効果について検討を精力的に進めてきた. そこで2年目は,穴や溝のある機械部品や実際の精密機械部品を用いた洗浄実験による検証を行うことにした.初年度までの測定では,使用するステンレス平板の形状については平面試料のみであったが,2年目は機械部品を想定した立体試料についても洗浄速度の測定を行った.具体的には,立体試料の狭隘部が洗浄効果に及ぼす影響を確認し,超音波洗浄,マイクロバブル充満洗浄,超音波を併用したマイクロバブル充満洗浄の比較を行った.その結果,立体試料において超音波を併用したマイクロバブル充満洗浄を行うと洗浄による残留油分量の変化では超音波洗浄より残留油分量が多くなるが,洗浄後の試料表面の観察では全体的に偏りなく洗浄できることが明らかとなった.3年目以降は,実際の精密機械部品を用いた洗浄実験による検証を行うため,さらに洗浄に最適な条件を検討し,その洗浄過程におけるメカニズム解明の一助としたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度(令和3年度)は,穴や溝のある機械部品や実際の精密機械部品を用いた洗浄実験による検証の一部分について進めることができた.初年度までは,使用する形状が平面試料のみではあるが,機械部品を想定した立体試料についても洗浄速度の測定を行った.具体的には,立体試料の狭隘部が洗浄効果に及ぼす影響を確認し,超音波洗浄,マイクロバブル充満洗浄,超音波を併用したマイクロバブル充満洗浄の比較を行った.その結果,立体試料において超音波を併用したマイクロバブル充満洗浄を行うと洗浄による残留油分量の変化では超音波洗浄より残留油分量が多くなるが,洗浄後の試料表面の観察では全体的に偏りなく洗浄できることが明らかとなった.これをまず残留油分量の経時変化から考えると,狭隘部を含む立体試料の洗浄では超音波洗浄が有効であり,超音波を併用したマイクロバブル充満洗浄は,水槽内にマイクロバブルを充満させず,更にマイクロバブルの量を減らすことで洗浄効果を向上させる可能性を示された.一方で,マイクロバブルを使用した洗浄では,試料表面に油分の偏りが見られないことから,複雑な構造物を洗浄する際は優位性があると言える.すなわち洗浄後の試料表面の観察から考察すると,狭隘部を含む立体試料の洗浄ではマイクロバブル充満洗浄と超音波を併用したマイクロバブル充満洗浄が有効であることがわかった.今後はさらに油分除去量が多くなるように検討する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度(令和4年度)以降は,実際の精密機械部品を用いた洗浄実験による検証を行うため,さらなる洗浄に最適な条件を検討し,その洗浄過程におけるメカニズム解明の一助とする.その洗浄方法の一案として,洗浄効果を高めるために環境に影響を及ぼさない程度の少量の界面活性剤を用いた場合の洗浄効果を明らかにすることを計画している.次年度は特に界面活性剤を併用したマイクロバブル充満時の洗浄効果の基礎的検討を行うために,平面試料と立体試料についての測定を行う.またこの測定のために,さらに耐久性の優れたマイクロバブル発生装置を新規に購入するために計画変更を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
既存のマイクロバブル発生装置が急遽故障したため,2年目(2021年度/令和3年度)の計画を変更し,新規にマイクロバブル発生装置の購入を優先した.このため想定より2年目の物品費が増加した.またコロナ禍のため2年目に延期となっていた国際会議(PACIFICHEM 2021)がオンライン開催のみとなったため,旅費についても次年度に繰り越した.次年度は,より耐久性に優れたマイクロバブル発生装置の購入が予定され,想定以上の費用が必要となるため,次年度へ繰り越した.
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