研究課題/領域番号 |
20K12236
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
山本 勲 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (40242383)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁場効果 / 磁気力 / 希土類イオン / リサイクル / 磁気濃縮 |
研究実績の概要 |
マッハツェンダー干渉計を組み込んだ濃度測定系を構築し、通常および特殊配列したネオジム永久磁石による磁気濃縮の予備的な測定を行った。 光学除震台上にマッハツェンダー干渉計を設置し濃度測定系を構築した。He-Neレーザー光をSpatial filterで光束径を拡大し、凸レンズで平行化し、ビームスプリッターで2分割した。ミラーを介して試料を透過する光と、試料無しまたは参照試料を透過する光をビームスプリッターで足し算し、凸レンズで集光してCCDカメラで撮影した。レーザーからカメラまでの光路長は1400 mmとした。カメラをPCに接続し、液晶モニターで干渉縞を観察した。干渉縞の2次元濃淡データをMATLABを用いて解析した。まず連続ウェーブレット変換によって雑音を低減し、リッジ抽出することで2次元濃淡マップから位相差マップを出力した。理論的には、干渉縞の濃淡は位相差に対応し、濃-濃間隔または淡-淡間隔は位相差の周期2πに対応し、濃度差に変換できる。屈折率の濃度依存性を予め測定し、20℃で24.845/wt.ppmと決定し、濃度変化を推定した。 光路長10 mmの石英セルに0.1 wt%濃度のDy(NO3)3・6H2Oを入れ、3つの磁場環境でDyイオンの磁気濃縮実験を行った。(1) フェライト磁石、および(2) Nd磁石による磁場印加では10時間以上経過しても干渉縞のパターンは変化せず、磁気濃縮は観測されなかった。6 mm角のNd磁石5つを組合わせたハルバッハ配列磁石の近傍の磁気力は6倍以上に増強された。この(3) ハルバッハ磁石をセル壁面に置いた配置では、観測直後から磁石近傍で干渉縞に変化が見られ、17時間後も変化は継続した。 干渉縞パターンを解析し、濃度変化を計算したところ、0.162 wt.%の濃化に対応した。磁気力効果として原液が16%濃化されたという顕著な磁気力効果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年の2020年度は、(1) 磁石配列など磁場環境の検討と、(2)濃度測定系の構築を目標に掲げた。(1)に関しては、ハルバッハ配列磁石の採用により、磁石表面近傍において6倍以上の磁気力を得られることがわかった。(2)に関しては、マッハツェンダー干渉計の導入およびソフトウェアによる画像処理により、希土類イオン濃度の変化を空間分解能0.1 mm、時間分解能1 s、濃度分解能1 ppmの精度で測定できる光学系を構築した。当初予定は概ね達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、(1) 磁気濃縮に適した磁場環境をさらに検討する。狭いギャップのが磁気濃縮にどれほど効果があるかを検討する。(2) 濃度測定系の安定化をはかる。構築した濃度測定装置は未だ雑音が多い。室温の制御や振動制御など物理的に解決できる課題と、ソフトウェア的に解決しなければならい課題がある。(3) Dyイオンのほか、Hoイオンなど異なる希土類イオンの磁気濃縮実験を行い、希土類イオンの磁化率が磁気濃縮挙動にどのように影響するかを定量的、定性的に検討する。研究の進捗に応じて余力があれば(4) 磁場環境として超電導マグネットの組み合わせ、(5) 異種の希土類イオンの混合溶液を用いた磁気分離に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置の組み立てに一部、ほかから借用できた部品を使用することができたので使用金額を抑制した。コロナ禍で実験補助等のマンパワーを注力できず人件費を次年度へ繰り越した。学会発表はすべてon-line開催となり、旅費を必要としなかった。繰越金と2021年度予算と合わせて、超電導磁石を低温に冷やすためのコンプレッサーを購入する。
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