研究課題/領域番号 |
20K12238
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
後藤 康夫 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60262698)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セルロース / 溶液紡糸 / イオン液体 / 高速化 / エアギャップ |
研究実績の概要 |
本研究は、イオン液体 (IL) をセルロース溶媒としたリヨセル法に採用し、凝固液の抵抗を低減することで、再生セルロース繊維の紡糸速度を1000m/minに引き上げることを目的としている。今年度は、イミダゾリウム系ILである1-butyl-3-methylimidazolium chlorideを溶媒に選定し、数μmの微細な水霧を凝固に利用して、種々の紡糸条件(ノズル形状、セルロースの分子量や濃度、紡糸液温度など)を精査することで、紡糸速度1000m/minを超える繊維化が可能であることを明らかにした。中でも紡糸の安定化および高速化には、エアギャップ(ノズル出口から凝固チャンバーまでの空間)の温湿度の制御が極めて重要であることを定量的に把握した。またエアギャップ雰囲気は、得られる繊維物性にも重大な影響を及ぼすことも明らかにした。いくつかの異なるエアギャップ条件で作製した再生繊維について、引っ張り強度と耐フィブリル性の関係を調べたところ、強度とフィブリル化には負の相関があることが判明した。すなわち、エアギャップ雰囲気が低温低湿であれば、分子配向が高度に進み強度が向上するがフィブリル化が起こりやすくなるのに対して、高温高湿になると強度は低下するがフィブリル化が起こりにくくなった。これらは、繊維の実用化を企図する際、生産性向上ならびに物性制御という観点より極めて有用な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題の目標値として掲げた1000m/minの紡糸速度を達成できたためである。この成功には、本課題で導入したゴデットローラーが非常に重要な役割を果たした。 また紡糸繊維の構造・物性評価についても、種々の紡糸条件で作製した繊維の物性を明らかにしており、予定通り進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
紡糸速度のさらなる向上と長時間紡糸の実現へ向けて検討を進めていく。また物性評価および構造解析を一層進めていくことで、学術的観点より繊維構造形成過程に関する有用な知見を収集していく。さらに本紡糸法により作製される繊維がどのような用途に適するか実用化へ向けた指針を得ていく。
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