研究課題/領域番号 |
20K12239
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
遠藤 宣隆 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (40314819)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 海水電解 / 水素製造 / 選択性制御 / 天然水利用 |
研究実績の概要 |
製作した薄板状の流路を持つ流通型電解槽を用い、白金板電極および白金メッキチタンメッシュ電極(Pt/Ti網電極)を両端(器壁面)に配置し、両極室を市販の陽イオン交換膜(アストム社製、NeoseptaCMX)により隔て、流路にはチューブポンプにより溶液を流通した。この電解セルに模擬海水(3.5wt% NaCl水溶液)を流通した。 Pt/Ti網電極においても、Cl2/O2選択性が濃度比に基づくと想定したCl2生成量に対し、実際の生成量は低い傾向を示した。板電極ではセル内の溶液流通が層流となり、電極近傍に電気二重層に類似した、線速度の遅い領域が形成されると推定したところ、網電極でも同様の傾向を示した。これは板電極のように形成された層流部か、電極近傍のメッシュ内部の溶液が、電極近傍の物質輸送が起こりにくい領域として機能すると考えられる。しかし板電極と比較して網電極は塩素生成がやや多い傾向を示した。この傾向については引き続き確認のための測定を実施しているが、この傾向が正しい場合、網電極の方がバルク(溶液流通部)との物質輸送が容易に生じることを意味するため、板電極と異なり、層流がきれいに形成されず、わずかに乱れた溶液流通となっていると考えられる。流量および電流密度の変化による影響は板電極と同様の傾向を示しており、これらの変動幅などに基づき、その挙動について引き続き検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度までにセルの構造変化における評価を終えて、原水の組成による影響評価とこれらのメカニズムの検討・解析を行う予定であったが、構造変化による影響評価を終えておらず、溶液組成による影響は未着手であるため、当初予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画の通り、構造変化および組成変化による影響評価を行う。既存の製作したセルおよび小型のセル(電極面積5cm2程度)を併用し、イオンクロマトグラフィーを用いて自然水・海水に含まれる無機成分の濃度変化を測定することにより、これらの電解への影響評価を行う。実験自体はやや遅延しているため、電気化学測定装置の追加購入も検討して、実験ペースを速める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ対応を行う必要があり、実験の進捗が遅れたため、購入予定としていた電気化学測定装置の購入を保留したこと、および消耗品費(イオンクロマトグラフィーのカラム等の、比較的高価格な物を含む)の支出額が少なくなったことによる。 2022年度に実施する天然水に共存する無機イオンに関する評価および全体的な実験頻度を上げるには、保留していた物品類を購入する必要があるため、これらの品の購入に充当する。具体的には、無機イオン評価に使用するイオンクロマトカラムおよび移動相に使用する試薬類と、実験頻度を上げるための電気化学測定装置(オートマチックポラリゼーションシステムおよびデータロガー)の購入に充てる。
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