研究課題/領域番号 |
20K12240
|
研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
高橋 武彦 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (50315636)
|
研究分担者 |
小笠原 正剛 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (40431613)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | バイオマス / 乾式粉砕 / 解きほぐし / ファイバー / バイオリファイナリー / 地球温暖化 |
研究実績の概要 |
植物由来の新材料であるセルロースナノファイバー(CNF)の利用が「脱炭素社会を引き寄せるイノベーションの加速化」として期待されている.そこで本研究では,乾式粉砕をキーとしたセルロースミクロフィブリルを解きほぐしとファイバー化を行う手法の確立について研究を行い,本年度は以下の成果を得た. 1.既存の300 mmサイズのタンデムリングミルで,オゾンを含んだ気体を蓋の中央から流入させた後,対面の蓋中央から排出する形で通過させることにより,スギ粉末がオゾンと反応できるようになった.2.その結果,含水率を15%以下に調整したスギ粗粉末800gを比粉砕物としたオゾンガス付加粉砕試験において,オゾン供給濃度350mg/hを供給することで,オゾンを供給しない粉砕と比べ,粉砕処理開始後20分時点で7ポイント程度のホロセルロース糖化率の向上が見られ,最終の60分粉砕後のホロセルロース糖化率はオゾンを供給しない場合の65%から72%に向上する結果を得た.また,この時の粉砕粉末の粒径は微粒子化せずに50μm程度となり,オゾンを付加しない場合の30μmと比べて比較的大きなサイズで推移する結果となった.3.容器を転動させる仕組を適用したリング媒体粉砕を用いて,せん断優位および圧縮優位の2種類の粉砕力を加えた場合の比較結果では,せん断優位粉砕においてホロセルロース試料は繊維状の構造になり,圧縮優位粉砕では凝集が強く表れ球状になること確認している.4.この300 mmサイズの粉砕容器においては,容器を転動させる仕組みは無く,せん断優位粉砕となっている.このことから,オゾンによりセルロース繊維内部の構造が部分的に破壊されて,繊維の解きほぐしとなる解繊効果が表れているものと考える. 以上より,本装置での粉砕力をベースとしてたせん断優位粉砕に加えて,オゾンを付加することで,繊維の解きほぐしが期待できる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既存の300㎜サイズのタンデムリングミルで,オゾンガスを通過させる形によりオゾンの効果を確認できてたが,オゾン供給濃度の効果については確認することが出来なかった.一方,スギ粗粉末の含水率を20%以上においても,繊維の解きほぐしとなる解繊効果を確認しているものの,オゾンとの複合効果の検討が不十分であったため,オゾン濃度を調整した検証が必要と考える.
|
今後の研究の推進方策 |
既存の300㎜サイズのタンデムリングミルで,オゾンガスを通過させる形により粉砕中にオゾンを付加することで,リグノセルロース繊維のほぐれを進行させるファイバー化が進んでいるものの,含水率20%を超える被粉砕物への効果は十分に検討できていない.今後は,オゾン濃度による影響を検討し,その構造変化を調べる.また,含水率によるクッション効果が有効であるとすると,逆に含まれる水の影響により,粉砕が進行することで粒子同士の凝集が進み,ほぐれた状態を維持しにくくなるなどの問題が生じると考えられる.これに対しては,クッション効果を与えるが疎水性である溶剤によるクッション性の付与が有効と考えられるため,エタノール,アセトン,無水酢酸などを用いたファイバー化の効果についても併せて検討する.構造評価は,粒径測定,酵素加水分解,X線回折装置に加えて,次に示す固体NMR測定によるドメインサイズ評価により実施する.
|