研究課題/領域番号 |
20K12241
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山崎 淳司 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70200649)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 未活用資源鉱物 / 環境浄化素材 / 粘土鉱物 / ゼオライト / マテリアルズ・インフォマティックス / 画像解析 |
研究実績の概要 |
その活性や賦存量、経済的優位性が認められていながら素材原料として未活用な我が国に十分な鉱量で産出する粘土鉱物、火山灰、土壌鉱物等の天然資源鉱物から、特異なイオン吸着固定特性や触媒活性を有する新規の無機環境浄化素材を探索してその調製プロセスを確立し、その効果の実用的評価法を構築する。すなわち、既存のゼオライト、粘土鉱物、層状複水酸化物等の、既存の環境浄化プロセスに利用されている規則型ナノ細孔質無機素材とは異なる、有害イオンに高選択性で回収・固定機能を有する新規無機環境浄化素材およびその合成法の候補を、従来の試行錯誤的なコンビナトリアル実験によらない、マテリアルズ・インフォマティックスを駆使した探索システムを構築し、実施する。 次に、探索で候補とされた高機能性が期待できる対象無機素材を、やはり最適候補として選択された産地の天然資源鉱物を原料として、出来る限り有機構造規定剤を使わない(SDA-free)グリーン合成法で、高収率の単相合成法を確立し、未活用の化学工学的に最適な調製プロセスを確立する。 さらに、得られる対象無機素材のバルク試料について、機能性を非破壊、迅速、高分解能で定量的に評価するために、ハイパースペクトルカメラをマウントした実体顕微鏡および偏光・位相差顕微鏡下で多波長領域2次元画像の同時収集を行い、素材組織および重金属イオンの吸着・拡散挙動を時分割で速度論的に評価するシステムを構築する。 対象とするラボ/ベンチスケールで重金属汚染モデル場(模擬地層または水槽)を構築し、そこに対象無機素材を充填した反応槽を設置し、水循環による重金属イオンの流動・回収(拡散)挙動を、その場で時分割の画像解析で評価を行うシステムを構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は文献調査より、純度が比較的高く、目的物質合成に阻害成分が少なく、鉱量が十分でかつ採掘が容易と推定される粘土鉱物、火山灰、土壌鉱物等の天然資源鉱物の産地を探索して、数か所のサンプリングを行い、対象産地と鉱産物を(本年度は鹿児島県のパミスと鳥取県のアロフェン粘土)に絞り込み、出発原料としての評価を行った。ただし、文献調査はデータベースの手作業によるところが大きく、AI検索には至っていない。また、当該出発原料を用いて、有機構造規定剤を使わない(SDA-free)グリーン水熱合成法で、LTA、FER、CHA型の各ゼオライト、およびMg-Al系LDH(層状複金属水酸化物)を高収率で単相合成することには成功した。しかし、さらに高機能性素材の合成には至っていない。すなわち、マテリアルズ・インフォマティックスの基本的な基盤は構築しつつあるが、我が国内で目的に最適な原料鉱産物、対象とする高機能性環境浄化素材の組成・構造・合成法の十分なAI検索成果には、作業途上である。 また本年度は、先にハイパースペクトルカメラを導入し、マウントした実体顕微鏡および偏光・位相差顕微鏡下で多波長領域2次元画像の同時収集を、予備試験として岩石およびセメントモルタル試料の研磨表面について実施し、基本的な画像収集および解析システムを組上げることはできた。
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今後の研究の推進方策 |
我が国内で目的に最適な原料鉱産物、対象とする高機能性環境浄化素材の組成・構造・合成法のAI探索を実現するマテリアルズ・インフォマティックスシステムの構築を継続し、実際に原料鉱産物の入手と合成実験による評価を行うことで、原料鉱産物とそれからグリーン合成できる最適な機能性素材の選択と評価をシステマティックに行っていく。 また、本研究で作製した環境浄化素材のバルク試料を、対象イオン溶液に浸漬し、加熱等の雰囲気調整したラボスケールのモデル実験を実施し、対象イオンの拡散、吸着固定挙動を、マルチスペクトルカメラで時系列に顕微鏡画像で収集・解析するシステムを構築し、さらに社会実装となるフィールド試験へつなげることを検討していく。
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